2023年11月号記事

幸福実現党 党首

釈量子の志士奮迅

第128回

釈党首

幸福実現党 党首

釈 量子

(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
https://shaku-ryoko.net/

露朝会談で日本危うし

北朝鮮の金正恩総書記がロシアのプーチン大統領と会談し、西側諸国を警戒させています。

注目を集めたのは、プーチン氏が列車から降りてくる金氏を歓迎し、握手を交わす1時間前、北朝鮮から弾道ミサイル2発が発射されたことです。北朝鮮のミサイル開発は国連安保理で禁止されているにもかかわらず、よりによって常任理事国であるロシア訪問時に、「ミサイル実験」を行ったのです。

これは当然、訪露に合わせた計画的なものと見られ、プーチン氏に事前に知らされていなかったとは考えにくいです。一方のプーチン氏も金氏到着時、ミサイル発射に驚く様子もなく、「お会いできて嬉しいです。旅はどうでしたか」と話しかける姿が公表されています。

欧米中心の国際秩序などには従わない、という両首脳の意思表示とも見て取れます。

こうした中、危惧されているのは、ロシアと北朝鮮の軍事協力が本格化していくことです。

露朝軍事協力が日本を脅かす

首脳会談での具体的な合意内容は明らかになっていませんが、一つには、ロシアの北朝鮮に対する、人工衛星や潜水艦に関する技術協力について話し合われた可能性があります。

プーチン氏は記者からの「北朝鮮の人工衛星開発を支援するか」との質問に対し、「そのためにわれわれはここにいる。(金氏は)ロケット技術に大きな関心を示しており、宇宙開発も進めようとしている」と語りました。

一方で、戦争を続けているロシアに対して、北朝鮮が武器供与を行うことについても、話し合われた可能性があります。すでに7月、ロシアのショイグ国防相が北朝鮮を訪問時、弾薬などの武器売却を求める働きかけをしたとの観測もあります。

ロシアと北朝鮮の軍事協力は、国際社会をますます混沌とさせることになるでしょう。

少なくとも確実なのは、ロシアが、アメリカに追従して対露制裁に参加している日本や韓国に対して、北朝鮮をカードとして使えるようになりつつあるということです。

その北朝鮮の軍事開発も飛躍的に進んでいます。3月には戦術核弾頭を初公開したほか、9月には戦術核を搭載した攻撃型潜水艦も進水させました。北朝鮮の核の脅威が増しており、そこに、日本が敵に回しつつあるロシアの脅威も重なろうとしています。

さらにここに、同じく欧米的価値観に挑戦しようとする中国が合わさってくれば、わが国は核を持つ国々を敵に回しての「三正面作戦」を強いられ、絶体絶命の状況に向かいます。これは何としても避けるべきです。

日本はロシア敵視政策から転換を

そのために必要なことは、ロシアを敵視する外交方針をいち早く転換することです。

ロシア-ウクライナ戦争の正義については、欧米とは異なる見方が必要であることはこれまでも述べてきました。

露朝首脳会談の直前に、インドで開催されたG20でも、共同声明に同戦争についてロシアを非難する文言を入れようとしたものの、半数の国が反対しています。日本も欧米の考え方に盲目的に従う必要はありません。

むしろバイデン米政権を筆頭に、「民主主義 対 専制主義」という表面的な対立軸を掲げて、さまざまな外交・軍事判断を行っているために、露中朝を結びつけようとしている危険性に気づくべきです。

現に金氏はプーチン氏との首脳会談後、「帝国主義との戦いで共に戦っていく」と語るなど、両国は「欧米の優越主義を打ち砕く」という点で結束しかねない状況に向かっています。

しかし白紙の目で見れば、ロシアは2020年の憲法改正でも「神への信仰」という文言を付け加えるなど、宗教国家の側面があります。独裁者が神のようにふるまう共産主義・無神論国家とは本質的に違うのであり、それを世界は見抜くべきです。

そしてロシアは日本に対して、対話の道を閉ざしてはいません。同国のラブロフ外相は9月1日、モスクワの大学で学生に向けて、「日本はアメリカの政策を疑わず愚かに従うことを決めた。悲しいことだ」「日本は依然として隣国だ。外交関係を維持しており、これにはわれわれも賛成している。対話にもオープンだ」と語っています。こうした対話のシグナルを捉えて、わが国は外交方針の転換を図るべきです。

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画像:Asatur Yesayants/Shutterstock.com,Alexander Khitrov /Shutterstock.com