香港議員が暴行を受けた香港空港。
《本記事のポイント》
- 親中派団体が、2人の香港議員に暴力的な行為をした
- 先立って、香港と台湾の独立派議員が交流していた
- 国際社会も、命がけで自由を守ろうとする香港と中国の独立派を支援すべき
香港立法会(議会)の羅冠聡議員は9日に記者会見を行い、親中国の過激派とみられる集団から香港空港で暴行を受けたことを明らかにした。
羅氏は2014年の香港の民主化デモ「雨傘運動」を主導した学生リーダーの一人。新党・香港衆志(デモシスト)の主席として、昨年9月に行われた立法会選挙に立候補し、当選した議員だ。
羅氏が台湾の台北で行われたイベントを終えて香港の空港に戻ったところ、「売国奴」とののしる親中国の過激派集団に取り囲まれ、殴られたり、液体をかけられたりして軽傷を負ったという。羅氏は会見で、こうした親中勢力の行動について、「愛国の名を借りた暴力」と批判した(9日付朝日新聞デジタル)。
香港と台湾の"独立派"の交流を嫌う親中派
なぜこのようなことが起きたのか。羅氏が参加していたイベントというのは、8日に台北市内で開かれた「民主自決」をテーマとしたフォーラムだった。
そこには、昨年9月の香港立法会(議会)選で議席を獲得した「香港独立」色の強い「本土派」の議員と、2014年の「ひまわり学生運動」を背景とする「台湾独立派」の新党「時代力量」の立法委員(国会議員に相当)たちが集まった。つまり、香港と台湾の"独立派"が一堂に会したのだ。
羅氏と同じく、2014年に起きた「雨傘運動」を主導した学生リーダーの一人である黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏も同イベントに参加し、「香港も台湾も北京政府の干渉に直面しており、さらなる交流で突破の方法を探し出せる」と強調した(8日付産経ニュース)。
黄之鋒氏が台北の桃園空港に到着した際、台湾独立に反対する在台中国人グループ「中華愛国同心会」の約200人のメンバーが急襲しようと試み、現地の警察部隊と衝突する一幕もあった。
中国当局も、フォーラム開催前に、「『台湾独立』と『香港独立』を掲げる勢力が愚かにも結託して国家分裂をたくらんでも絶対にうまくいかない」(国務院台湾事務弁公室)と批判 (9日付朝日新聞デジタル)。フォーラム開催中も、場外では台湾の親中団体がしきりに抗議活動を行っていたという。
これらの動きから、親中派の勢力が、反中的な学生運動から政界入りした香港と台湾の議員の交流をいかに警戒しているかが分かる。
「自由と民主主義の精神」を中国にも広める
中国は「香港と台湾を吸収し、中国本土と同じようにしたい」と考えている。だが、その圧力の中、香港や台湾で「民主自決」を訴える若き政治家たちは、命がけで香港や台湾の自由を守るために戦っている。
大川総裁は、著書『世界を導く日本の正義』の中で、次のように語っている。
「 中国政府は香港に対して非常に弾圧的な政策を取っていっていますし、それを台湾が怖がっていますが、かつての香港の繁栄、『自由と民主主義』の繁栄が、台湾だけではなく、中国全土に広まるようにしなくてはなりません 」
香港では3月に行政長官選挙があり、普通選挙を求める民主化デモが加速することが予想される。また台湾も、トランプ新政権の発足によって対米関係が変わり、さらに、米中関係も大きく変わる可能性が高い。
大川総裁はまた、著書『国際政治を見る眼』で次のように述べている。
「 香港で孫文がやり損ねた、『三民主義』(民族主義・民権主義・民生主義)的な民主主義化を中国本土に働きかけることによって、中国が取ろうと考えているのが分かっている、台湾、あるいは、沖縄が中国化していくのを止めることは可能かと思います。ただ、香港単独では持ちこたえられないのではないかと思いますので、やはり、アメリカやヨーロッパも含め、上手に国際世論づくりをしないといけないでしょう 」
香港と台湾という2地域のみならず、日本を含む国際社会も連携することで、香港や台湾が享受していた『自由と民主主義』を守るべきだ。さらにその精神を中国にも広げ、香港と台湾を「中国民主化の震源地」としていく支援が必要だ。
(小林真由美)
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