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香港の自治が揺らいでいる。日本の国会に当たる、中国・全国人民代表大会の常務委員会(以下、全人代常務委)は、7日、香港立法会の反中派議員2人の議員資格を無効とする旨の判断を下した。

資格を剥奪された議員は、「青年新政」の梁頌恒(リョウ・ショウコウ)氏と游蕙禎(ヤウ・ワイチイン)氏で、全人代常務委によれば、議会の就任宣誓に問題があるという。

問題とされたのは、両氏が10月の議員就任宣誓時に、"HONG KONG IS NOT CHINA"(香港は中国ではない)という横断幕を持ちこんだ上、中国を侮辱的な単語で表現したことだ。

これに対して、香港政府の梁振英(リョウ・シンエイ)行政長官は、7日、香港で記者会見を開いた。梁行政長官は、「国家分裂の主張はすべて阻止せねばならない」と述べ、全人代常務委の意向に従い、香港内での「独立派」の主張を封じる方針を示した。

中国本土が香港の自治に介入したとして、日本及び世界各国が報じている。

高まる香港市民の不満

香港は、1997年の中国返還後、外交と国防を除く「高度な自治」が50年間保証されている。中国は「一国二制度」のもと、香港では言論の自由や司法の独立が認められ、香港市民は自由に議員を選ぶことができるとしている。

しかし、返還20年を待たずして、中国政府は香港の立法会(議会)議員の立候補者を限定するなど、事実上中国の制度に組み込まれつつある。今回、民意で選ばれた議員が中国政府の裁量により排除されることは、「一国二制度」の形骸化をさらに進めると言える。

香港では6日夜から7日未明にかけて大規模なデモも起きており、中国政府に対する不満は高まっている。

司法の独立が脅かされている

香港の保守系メディア大手である「ネクスト・メディア」の楊懷康社長は、リバティ編集部に以下のようなコメントを寄せた。

「これは明らかに香港基本法(憲法)の侵害です。本来ならば、香港の上告裁判所による解釈が必要となるところを、香港の司法にとって代わって中国本土の全人代が勝手に解釈したのです」

また、香港のジャーナリストは「香港の司法の独立性を脅かすものです」と本件の重大性を述べた。

香港から起こる民主化の波

香港では、2014年9月に「雨傘革命」という民主化要求運動が起こったが、中国政府からの圧力を受け、香港市民の民主化を求める声はますます強まっている。

「民主化」を求める香港と、表向き自治を認めてはいるものの、香港を中国共産党の下で一元支配したい考えの中国とで、溝は深まるばかりである。

香港が、中国共産党に完全支配されることなく、「中国民主化」の震源地となることを願ってやまない。(片)

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