2014年に香港で起きた民主化デモ「雨傘革命」(Lewis Tse Pui Lung / Shutterstock.com)。

香港の立法会(議会)選挙の開票が5日に行われた。今回の選挙では、「親中派」の候補者が40議席を獲得した。一方、香港の民主化を主張する「民主派」は29議席を獲得し、重要な議案を否決できる3分の1の議席を確保した。

香港の選挙では、従来の香港政府と近い考え方をする「親中派」と、香港の民主化を求める「民主派」の二大勢力に分かれていた。近年は、民主派に近い勢力として2014年の「雨傘革命」で注目された新勢力で、香港を「本土」とみなし、中国共産党の考えには従わないと主張する「本土派」が躍進している。今回は、従来の「民主派」に加え、「本土派」も合わせて3分の1の議席獲得となった。

雨傘革命とは、中国側が香港の行政長官選挙から民主派を排除する方針を正式に決定したことを受け、2014年に若者を中心に行われた民主化デモを指す。

今回当選を果たした「本土派」には、雨傘革命の学生リーダーたちが結党した「香港衆志(デモシスト)」の主席の羅冠聡氏などが含まれる。新党「デモシスト」は、香港の未来は香港人が決めるという「民主自決」と、「暴力に頼らない民主化」などを公約に掲げている。羅氏は報道陣を前に、「民主主義の価値観を守ろうとする人たちと協力していきたい」と語った(6日付毎日新聞)。

香港を社会主義国家にしようとする中国政府の圧力の中、香港で「民主派」と「本土派」が3分の1以上の議席を確保したことは、多くの香港人が民主主義的な香港の持続を求めていることを示している。

裏目に出た中国政府の締め付け

中国政府は香港について、2047年までは「一国二制度」を約束しており、香港の高度な自治を保障している。しかし香港では、中国の指導者を批判する書籍を発行した「銅鑼湾書店」の関係者が失踪するなどの事件が起きており、香港人は「高度な自治」が保障されなくなっていく危機感を募らせてきた。

今回の選挙では、香港政府も数名の独立派の候補者の出馬を禁じるなど、締め付けを強化していた。こうした政府の対応が裏目に出て、かえって香港住民の危機感を煽り、民主派への支持が高まったとみられている。

中国に吸収されたくない香港と台湾

中国との関係において、香港と状況が似ている地域に、台湾がある。今年の1月に行われた台湾の国政選挙では、中国と距離を置く民進党が、親中派の国民党を破って政権を勝ち取った。香港でも民主派や本土派が勢力を伸ばしていることから、台湾や香港で、「中国に統一されたくない」という民意が盛り上がっていることは明らかだ。

大川隆法・幸福の科学総裁は5年前の2011年、香港で英語講演を行い、香港の人々に対して次のメッセージを伝えていた。

香港は中国のリーダーである。中国の人々を啓蒙し、中国の未来の方向性を指し示してほしい 」(『大川隆法 フィリピン・香港 巡錫の軌跡』参照)

中国は、香港を中国のようにしようとしているが、むしろ中国を香港のような自由な国にしていく必要がある。それは、中国や香港の人々の幸福はもちろん、アジアの平和にもつながる。

その過程で、今後、中国と香港や台湾の間で摩擦が強まり、最悪の場合は武力弾圧などの内乱にまで発展する恐れもある。そうした事態を防ぐためにも、各国のメディアは、香港の動向を注意深く見守り、香港の自由と繁栄を守っていく必要がある。

(小林真由美)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『大川隆法 フィリピン・香港 巡錫の軌跡』 大川隆法監修/幸福の科学編

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=27

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