台湾のシンボルタワー「台北101」。
《本記事のポイント》
- 「台湾侵略」は中国共産党の悲願。いずれ動き出す
- アメリカは経済的、軍事的に台湾防衛を加速させている
- 2019年、日本の選択が国際社会の流れを決める
「外部の干渉や台湾独立勢力に対して武力行使を放棄しない」――。
中国の習近平国家主席は2日、将来的な統一を視野に入れた台湾に関する方針演説で、そう語った。
この発言は、1979年、中国が台湾に平和統一を呼びかけた「台湾同胞に告げる書」を発表してから、40周年を記念する式典でのもの。式典では、5項目の台湾政策を提示した(以下、3日付朝日新聞より引用)
(1) 台湾同胞も中国人であり、ともに「中華民族の偉大な復興」を推進する
(2)「一国二制度」の台湾モデルを模索する
(3)「一つの中国」原則を堅持し、台湾独立には絶対反対。武力使用の選択肢も放棄しない
(4) 中台の経済協力を進め、融合的な発展により平和統一の基礎を築く
(5) 共通の文化を持つ同胞が心を通わせる交流を止めず、平和統一に向けた合意を育む
その直後、台湾で蔡英文総統が会見を開き、習氏が提示した「一つの中国」「一国二制度」などに対して、「台湾は絶対に受け入れない」「台湾2300万人の人民が、自由と民主主義を堅持していることを尊重すべきだ」と反発した。
年初から緊張する中台関係は、2019年、習氏が対外強硬策に打って出ることを暗示しているのかもしれない。
経済的、軍事的に台湾防衛を加速させるトランプ氏
習氏が台湾政策を発表した背景には、アメリカのトランプ大統領が昨年12月31日、アジア諸国との安全保障や経済面の包括的な協力関係を強化することを盛り込んだ「アジア再保証推進法」に署名し、成立したことがある。
この法律には、防衛装備品を台湾に売却することを推進する内容や、インド・太平洋地域での定期的な航行の自由作戦などが盛り込まれた。
トランプ氏は2016年の大統領選挙で当選後、就任の直前、蔡氏と電話会談し、台湾を独立国のように扱い、世界を驚かせた。就任後の17年には、アメリカと台湾の閣僚の相互訪問を促す「台湾旅行法」を成立させたり、事実上の在台アメリカ大使館「米国在台協会(AIT)」を開いたりするなど、経済的、軍事的にも台湾防衛を加速させている。
経済的に中国接近を加速させる安倍首相
日本はどうか。
安倍晋三首相は昨年10月、財界人トップ500人を引き連れ、中国の北京を訪問。習氏と首脳会談などを行い、中国企業などと50件以上の契約を交わすなど「一帯一路」構想に協力、5年ぶりの通貨スワップ協定の再開に合意するなど、日中の経済関係の強化を図った。
この動きは、2019年10月の消費増税を控え、「私はトランプさんとは違い、中国と仲良く貿易を続けていくので、経済的な落ち込みは心配しないでください」という日本国民へのメッセージにもとれる。
また、日本の大企業に対しても、「中国と仲良く貿易をするので、引き続き皆さんは、輸出で稼げます。消費税10%に上がっても、輸出品には『輸出戻し税』として増税分が返ってくるので、大企業の皆さんにダメージはありません」というアピールにも見える。
2019年、日本の選択が国際社会の流れを決める
トランプ政権による関税引き上げで、中国は現在、国内経済が落ち込んでいる。不動産価格の暴落で、それ以前にマンションなどを高値で買わされた住民が抗議デモを繰り広げるなど、国民の不満も爆発寸前だ。
中国にとって2019年は建国70周年の節目であり、10月には大規模な軍事パレードを開くとも言われている。対外的に強硬な姿勢を見せ、国民の不満をそらしたり、国内の引き締めを行うのは中国の常套手段。そもそも、台湾を支配することは、2021年に結党100周年を迎える中国共産党の悲願でもある。
もちろん、「武力行使も辞さない」と宣言している中国が台湾を侵略すれば、その目と鼻の先にある沖縄が取られるのも時間の問題となる。
安倍首相は、もう政権の延命だけを考えている場合ではない。まず、早々に「消費増税の中止」を宣言し、「減税による税収増」を目指し、経済を強くし、防衛力を強くする。中国封じ込めに動くトランプ氏と共闘すべきだ。
安全保障面でも、1月21日に行われる日露首脳会談で、プーチン大統領と北方領土返還などの条件を付けない形での「日露平和条約」締結を前進させ、アメリカとともに、日米露でがっちりとスクラムを組むべきだ。
米中冷戦の本格化が予想される2019年、アジアの盟主である日本の選択が、良くも悪くも国際社会の流れを大きく変える。
(山下格史)
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