《本記事のポイント》
- ウクライナ戦争をミサイルの精度を上げる絶好の機会にする北朝鮮
- ロシア人技術者が北朝鮮を支援
- 北朝鮮の韓国政策の大転換
河田 成治
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。
北朝鮮から韓国を防衛するために韓国軍が過去最大規模の大演習を行ったことや、ウクライナ戦争で北朝鮮が息を吹き返した実態についてお話ししてきました。
現在の北朝鮮のロシアとの関係は、準軍事同盟にあるとみるべきです。ウクライナ戦争においてロシアは昨年末より急激に弾道ミサイルの発射を増やしていますが、この中には北朝鮮から供与された火星11A(KN-23)および火星11B(KN-24)短距離ミサイルが大量に含まれています。
これまでのところ火星11は50発以上が発射されたようです。なお火星11Aはロシア製のイスカンデルMを模倣したミサイルですが、イスカンデルMが実戦で成果を上げている反面、製造が追いつかないために、同様の成果を北朝鮮の模倣品である火星11Aに期待したのだろうと推測されます。
しかしロシアが発射した北朝鮮製の火星11のうち、半数は空中で爆発、残りの半数がウクライナに到達したものの、比較的正確に着弾したのは石油精製所と飛行場への攻撃に使用された2発だけだったようです(*1)。
ウクライナで回収された北朝鮮の火星11の残骸から、電波妨害への対策がない(オリジナルのイスカンデルMにはある)ことなど、北朝鮮ミサイルの技術と精度の低さが露呈しました。しかし、侮ることは決してできません。
北朝鮮は実戦を経てデータと経験、さらにはロシアからのフィードバックや新規の技術支援を得て、今後、さらに改良されたミサイルを開発すると見るべきです。
(*1)ロイター(2024.5.8)、ロイター(2024.2.17)
ロシア人技術者が北朝鮮を支援
北朝鮮のミサイル開発は、ロシアからより直接的かつ積極的に技術支援を受けて、一段と脅威度が増すと思われます。
前述のウクライナでの実戦との関連は不明ですが、さっそく5月17日に北朝鮮のミサイル総局は、新しい誘導システムを導入した戦術弾道ミサイル(火星11Aの改良型)の試験射撃を行い、発射試験を通じて、誘導システムの正確性と信頼性が検証されたと発表しています(*2)。
また27日、北朝鮮は偵察衛星を搭載した新型ロケットを打ち上げました。これまで北朝鮮は衛星打ち上げ用ロケットエンジンには、猛毒のヒドラジン系燃料を使用してきましたが、新型ロケットは液体酸素+ケロシン(高純度灯油)を燃料とし、より強力な推進力を生み出すことが可能となりました。
(*2)朝鮮中央通信(2024.5.18)
HSU未来創造学部では、仏法真理と神の正義を柱としつつ、今回の世界情勢などの生きた専門知識を授業で学び、「国際政治のあるべき姿」への視点を養っています。詳しくはこちらをご覧ください(未来創造学部ホームページ )。