2023年4月号記事

ニッポンの新常識

軍事学入門 33

台湾有事でアメリカは腰が引けている

社会の流れを正しく理解するための、「教養としての軍事学」について専門家のリレーインタビューをお届けする。

元陸上自衛隊
小平学校副校長

矢野 義昭

矢野義昭
(やの・よしあき)1950年、大阪府生まれ。京都大学卒業後、一般幹部候補生として陸上自衛隊に入隊し、第1師団副師団長兼練馬駐屯地司令などを歴任。元陸将補。現在、(財)日本安全保障フォーラム会長、防衛法学会理事を務める。著書に『核拡散時代に日本が生き延びる道』(勉誠出版)など多数。

バイデン米政権が中距離ミサイル(射程約3000~約5500キロメートル)の日本への配備を見送ると読売新聞が1月下旬にスクープしました。その後、産経新聞がそれを打ち消す記事を掲載しましたが、いずれにせよ、日本に配備される見通しは立っていません。

この状況は日本からすれば青天の霹靂であり、本来物議を醸すべきですが、その機運は全くありません。台湾有事が起きた際、バイデン政権は中国との核戦争を避け、米兵の血が流れないようにすべく、日本と台湾を戦場にして日台を軍事支援する「代理戦争」を選択できるようにする目的で、ミサイル部隊を配備しないという意思が透けて見えます。そうなれば、日本は「ウクライナ化」し、存亡の危機に直面しかねないのです。