《ニュース》

長期にわたるウクライナへの武器支援により、米軍の対応能力に懸念が出ていると指摘する報道が、米国内で再び出ています。

《詳細》

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は8月29日、155ミリ榴弾(りゅうだん)砲(M777)に使われる155ミリ砲弾の弾薬在庫が、「不快なほど低い(uncomfortably low)」水準まで減ったとする国防当局者の声を報じました。

同紙報道によると、「アメリカが大規模な軍事紛争には関与していないため、在庫水準はまだ危機的ではないとしつつも、『戦闘に参加したい水準ではない』」とのことです。

155ミリ榴弾砲は20キロ以上の射程を持つ牽引型の火砲です。米政府の発表によれば、すでに最大80万6000発の155ミリ砲弾をウクライナに供与したとのことです(8月24日時点)。

戦争開始から半年、アメリカはウクライナに「戦力の逐次投入」を行ってきました。前述のウォール・ストリート・ジャーナル紙記事が「複数の国防当局者による」と報じたところによると、これらの装備や弾薬の多くはアメリカの在庫から直接供給されており、予期しない脅威に対処するための備蓄が枯渇しつつあるといいます。

国防総省側はこうした懸念を否定してはいます。同省高官は29日、同報道に関する記者の質問に対し、国防総省は武器支援の決断をする際に自軍の準備態勢を常に考慮にいれており、武器を提供しながら自軍の対応能力を維持することは可能だと答えました。

しかし、これに先立ち6月にもニューヨーク・タイムズ紙が、ウクライナが武器の追加提供を求める一方で、国防総省内部では米軍の武器在庫および対応能力に影響するという懸念が出ていることを報道(13日付)。

中国とロシアを相手取る二正面作戦、さらにはイランや北朝鮮なども加えた陣形を強いられていることに対し、米軍の戦力がもつのか、長らく懸念の声が上がっています。

加えてここに来て、ウクライナ政府の汚職問題や外交能力の欠如に焦点が当たり、同政府に対する批判の声が米国内で強まっています(関連記事参照)。

ウクライナ政府の汚職問題をめぐっては、届いた武器・物資の横流しの懸念が特に大きく、例年米政府が公表している「世界軍事費と武器取引報告書(World Military Expenditures and Arms Transfers)」の公開をバイデン政権が突如今年から中止したことは、一連の問題に関係があるのではないかと指摘する声もあります。

一連の状況から、ウクライナ支援の"正当性"および程度の妥当性に疑問を持つ米国民が、今後さらに増える可能性が高いと言えます。

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