2020年9月号記事

ニッポンの新常識

軍事学入門 2

なぜ沖縄に米軍は必要か

社会の流れを正しく理解するための、「教養としての軍事学」について、
専門家のリレーインタビューをお届けする。

元航空自衛隊空将

織田 邦男

プロフィール

(おりた・くにお)1974年、防衛大学校卒。第6航空団司令官、航空支援集団司令官(イラク派遣航空部指揮官)などを歴任。現在、東洋学園大学客員教授、国家戦略研究所所長を務める。

中国は、建国から100周年を迎える2049年までに、米ハワイより西の西太平洋を支配し、世界の超大国になることを国家目標として掲げています。しかし、中国が西太平洋に侵出しようとする際、沖縄が障壁となります。中国としては是が非でも沖縄を領有し、自由に海に出られるようにしたいのです。

沖縄は、地理的な要因からも重要な地域です。半径1000キロメートルには、台湾と韓国の釜山が含まれます。

中国が圧力をかける台湾に対し、沖縄から輸送機「オスプレイ」を飛ばせば、1時間強で到着できます。米軍が台湾海峡と朝鮮有事に即時に対応できる場所は、沖縄しかないのです。

それに加えて、沖縄から半径2000キロメートルには、中国の首都・北京や、戦略原子力潜水艦の基地がある中国・海南島、朝鮮半島の全域、そしてフィリピンの大半が入ります。

日本やアメリカにとって、台湾海峡や朝鮮半島、南シナ海の有事に対処するには、沖縄の基地は極めて重要です。