写真:ロイター/アフロ
2019年11月号記事
編集長コラム Monthly Column
「はじまり」としての香港革命
──『共産党宣言』と唯物論国家を葬り去る
香港市民は中国共産党が繰り出す巨大な「暴力」に立ち向かっている。香港警察は中国共産党が事実上指揮し、平和的なデモ参加者を乱暴なやり方で逮捕。小さな規模で「第二の天安門事件」が再来している。
その恐怖の中で活動家たちは「普通選挙の実現」などの要求を掲げる。その先には中国の民主化も視野に入る。 「香港革命」から「中国革命」が実現するだろうか。
革命を支えるキリスト教精神
1991年のソ連崩壊の際も周辺国が重要な役割を果たした。ポーランドの民主化運動から「東欧革命」が起き、ソ連解体につながった。
その出発点はローマ法王ヨハネ・パウロ二世の宗教的情熱にあった。1979年、ポーランドに里帰りし「人間の尊厳をキリスト抜きには理解することはできない」と説法。集まった国民100万人が「私たちは神を欲する(We want God)」と叫んだ。
アジアの冷戦の終わりに向けても周辺国・地域の役割は大きい。香港デモもキリスト教徒が中心にいる。 民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏はカトリック信者で、キリスト教精神に基づき、「弱い人のために行動する」と語っている。前ページのレポートにもあるように、地上の命を惜しいと思わないような自己犠牲的なキリスト教精神が「香港革命」を支えている。
東側での「自由の創設」
レーガン大統領の軍事・経済的な力とヨハネ・パウロ二世の宗教パワーによって、ソ連崩壊が導かれた。写真:UPI/アフロ。
ソ連崩壊にはアメリカの軍事的・経済的包囲網が機能した。当時のレーガン大統領がヨハネ・パウロ二世と密接に連携しつつ、経済競争でソ連をギブアップさせた。
思想的にはアメリカの政治哲学が後押しとなった。1776年のアメリカ独立は、イギリスの植民地支配を脱し、「自分たちの国の未来を自分たちの手で開く」ことを目的とした。20世紀の哲学者ハンナ・アレントは米独立を「自由の創設」と高く評価。この思想が冷戦後のソ連・東欧圏の民主化を下支えした。
問題はアメリカがソ連に対抗するため、中国共産党と組んだことだ。中国は1989年に民主派を弾圧した「天安門事件」を起こし、社会主義国として生き延びた。
ソ連による粛清の犠牲者は約2千万人、中国共産党による犠牲者は約6千5百万人とされる。より大きな「悪」が残った。
中国国内ではキリスト教や新宗教だけでなく、伝統的な仏教や道教への弾圧が強まる。社会の隅々まで監視社会を築き、「一帯一路」で自由の抑圧を"輸出"しようとしている。香港はその最前線にある。
香港の若者たちは香港にあるアメリカ領事館前でデモ行進し、助けを求めた。トランプ政権は貿易戦争に勝つことに軸足を置き、香港デモを本格的に支援する動きは見せていない。同時に彼らは日本にも「SOS」を発信している。その叫びを日本はどう受け止めればいいだろうか。
ソ連崩壊での日本の役割
香港デモは、国際社会の圧力が成否のカギを握っている。写真:UPI/アフロ、ZUMA Press/アフロ。
実は、ソ連崩壊で日本の果たした役割は大きい。軍事・経済の包囲網では中曽根政権がアメリカと歩調を合わせて防衛費を増額。加えて、急成長した日本の産業力がソ連を圧倒した。言論人の故・渡部昇一氏は「ソ連・東欧で商品化できなかったオーディオ製品や家電はみな日本製で、世界中が欲しがった。日本のハイテク・半導体産業が冷戦を終わらせた」と指摘していた。
中国との冷戦でも、軍事・経済の包囲網の重要部分を形成し、アメリカとの連携で隙をつくらないことが求められる。
また、 ソ連との冷戦と同様、思想の力、そして宗教の力で戦い抜くことも重要だ。
ナチス・ドイツの支配を経験したアレントと経営学者ピーター・ドラッカーは戦後、全体主義と戦い、終わらせるための哲学や理論を構築した。
アレントは、人間は一人ひとりが唯一の存在であり、この世に生きた証を後世に遺そうとする政治的な「活動」の中に幸福があるとした。先に触れたアメリカ革命のような「自由の創設」は、「活動」に目覚めた人たちが国の未来を創るもので、香港の若者たちが行動で示している。
ドラッカーはジャーナリスト時代にヒトラーにインタビューし、その危険性を見抜いた。全体主義に対抗するため、大企業の力を利用することを考え、マネジメントの理論を生み出した。
アレント哲学を出発点として
幸福の科学の大川隆法総裁は学生時代、アレントの哲学の全体像を明らかにする論文を執筆した。 アレントの思想体系を、(1)「観照」「活動」「仕事」「労働」についての人的価値論、(2)私的・公的領域についての空間論、(3)「歯車型歴史観」と独自に名づけた時間論に分けて解説。
心の内に神を発見する「観照」、政治的な公的領域で後世に名を遺す「活動」、有用な道具をつくる「仕事」、生存のための「労働」の順で価値が高いとした。その上で、この4つの人間のあり方が古代から近代まで歯車のように回転しながら時代の中心的な価値観を形成したと論じた。
これらが後に、幸福の科学の教えの根幹となる、価値論としての『太陽の法』、空間論としての『永遠の法』、時間論としての『黄金の法』(*1)の基本三法の出発点となった。
また、大川総裁は総合商社での仕事を通じ、ドラッカーの経営論を実践しながらグローバル組織のマネジメントを身につけた。それが幸福の科学の成功理論、繁栄思想に結実した。
(*1)いずれも幸福の科学出版刊。
全体主義と戦う思想
幸福の科学を支持母体として2009年に創設された幸福実現党は、カール・マルクスが1848年に著した『共産党宣言』を葬り去ることを一つの目的としている。
マルクスの共産主義の特徴は、以下の3点に整理できる。(ア)唯物論であるため、地上での不幸だけを見て被害妄想に陥る。(イ)お金持ちに嫉妬し、強制的に奪う(暴力革命)。(ウ)お金持ちを憎み続け、結果平等の社会をつくる(階級闘争)。結局は特権層が生まれ、独裁となる。
大川総裁は基本三法やその他の法話で以下の教えを説いてきた。(ア)人間は地上を超えたあの世から生まれ変わっており、この世で恵まれなかったとしても、そこに魂修行の課題がある(霊的人生観)。(イ)嫉妬し、他の人から奪うのではなく、自分のできる中で「与える愛」に生きることが大切。(ウ)結果平等ではなく、自ら豊かになるための智慧を学び、組織をマネジメントし、それらの智慧を他の人にも広げることで企業や国が繁栄できる。その繁栄が地球のさまざまな文明をつくり出す。
アレントやドラッカー以上の、全体主義と戦い、それを終わらせる思想が紡ぎ出され続けている。 幸福実現党は、この思想によって中国の共産党政権の崩壊、民主化だけではなく、二度と唯物論国家が現れない時代をつくろうとしている。
「日本発の思想」による革命
大川総裁は「 『日本発の思想』が中国を変える可能性は大いにあると考えています 」と語っている(*2)。
2011年5月の香港での説法では「中国の香港化」の方向性を示し、2019年3月の台湾での説法では「台湾の民主、自由、信仰を中国に広げること」を訴えた。こうしたメッセージは香港や台湾の活動家、独立派に伝わっている。
だからこそ、このほど周氏と習近平氏の守護霊霊言が発刊された際、中国の国営放送・中国中央テレビ(CCTV)がいち早く反応した。この霊言の内容を批判的に"報道"し、結果的に1億人近くに伝わることとなった。
アレントは「革命」は「はじまり=beginning」だと述べていた。この考え方は宗教的な観点から見れば、「人間は神仏によって一人ひとりが違った個性として創られ、この世にそれぞれ異なる目的と使命を持って生まれ変わる。そうした人間が『活動』することで地上に新たなものが創造される」と理解できる。
「香港革命」は新しい歴史の「はじまり」であり、日本人もその重要な担い手であるという自覚を持たなければならない。
(*2)『秦の始皇帝の霊言 2100中国・世界帝国への戦略』より。
(綾織次郎)
マルクスの共産主義思想
- 唯物論
- 暴力革命
- 階級闘争
全体主義を終わらせる思想
アレントの政治哲学
- この世に生きた証を後世に遺す「活動」が重要
ドラッカーの経営論
- 企業のマネジメントの力で全体主義に対抗
幸福の科学の教え
- 霊的人生観
- 与える愛
- 智慧やマネジメントなどの成功理論、繁栄思想