米国防総省は15日、中国が13日に打ち上げたロケットが3万6千キロメートルの静止衛星軌道に近づくルートを取ったと公表した。中国は「高空の観測試験のための実験」だったと主張しているが、衛星攻撃兵器の実験だったという見方が広がっている。17日付各紙が報じた。
すでに中国は2007年、高度850キロメートルにあった自国の人工衛星を破壊することに成功している。今回の実験は、高度2万キロメートルにあるGPS衛星や、3万6千キロメートルにある早期警戒衛星への攻撃を想定したものと見られる。
中国の衛星攻撃実験にアメリカが目を光らせるのは、アメリカが現在、諜報活動のための地上の撮影や無人機のGPSでのコントロール、弾道ミサイルの迎撃システムなどに、人工衛星を利用しているからだ。国際的な非営利組織「憂慮する科学者同盟」のローラ・グレゴ上級アナリストは、中国がアメリカのGPS衛星を12基破壊すれば、アメリカの精密誘導攻撃などを1日あたり数時間停止させられると指摘する。(同NPOウェブサイト)
アメリカの軍事活動は衛星に頼った部分が大きく、破壊されると、米軍の活動に広範囲で支障が出かねない。
中国はアメリカの衛星を破壊してしまいさえすれば、十分戦えると考えているとも言われ、中国軍事専門家の平松茂雄氏は、著書『日本は中国の属国になる』で次のように述べている。「米国の軍事力は偵察衛星により宇宙から指揮されているから、その偵察衛星の機能を無力化すれば、どのように現代化された米軍の部隊も、活動できなくなる」
中国は経済ではアメリカを追いかけており、軍事では、東シナ海から米軍を追い出す戦略を取っている。衛星攻撃兵器も、アメリカの優位を突き崩す作戦の一環であり、対策が急がれる。(居)
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2011年10月6日付本欄 60年代から核開発→海洋進出→宇宙軍構築 平松茂雄氏が指摘する中国の大戦略
http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=3009
2008年6月号記事 新・中華帝国は海と宇宙とネットを支配する─中国が向かう3つのシナリオ