全国公開中

《本記事のポイント》

  • 人間の可能性を引き出す教育
  • 障害者の魂の健全性
  • 才能ある女性が背負う十字架

20世紀初頭のイタリア、ローマ。障害児教育を通して、独創的な教育方法を開発しつつあったマリア・モンテッソーリのもとにフランスの有名な高級娼婦リリ・ダレンジが訪ねてきた。リリは娘に知的障害があることを世間に知られそうになり、自分の名声を守るためパリから逃げてきたのだった。

当初は、モンテッソーリの施設に娘を押し付けることが狙いだったリリだが、モンテッソーリの独創的な教育を通して、障害を抱える子供としてではなく、強い意志と才能を持つ一人の人間として、ありのままの娘を知っていく。

そして「モンテッソーリ・メソッド」を世に知らしめていくことに大きな使命を感じるようになったリリの協力のもと、モンテッソーリの運命の歯車が回り始める。

リリの娘ティナ役のラファエル・ソンヌビル=キャビーをはじめ、劇中に登場する障害を持つ子供たちの役には、同じ立場の子供たちを起用。ドキュメンタリー映画を中心に手がけてきたレア・トドロフが長編劇映画初監督を務めた。

人間の可能性を引き出す教育

この映画の魅力は、画期的な教育方法を開発したマリア・モンテッソーリの創造的な発想が生き生きと再現されている点にある。

当初障害児教育に従事していたモンテッソーリは、子供に与える刺激によって、子供の中に潜んでいる潜在的な能力や可能性が引き出されていくことに着目する。そして当時、精神病院に押し込められ、欠陥のある人間としてしかみなされなかった障害児たちを、健常者並みに働く可能性があることを立証していく。

そこにあるのは、人間の可能性をとことんまで探求しようとする、彼女の飽くなき意欲と情熱であり、"母親の慈しみこそ教育のベースであるべきだ"という不屈の信念である。

医師であり、実験心理学、人類学、教育学などを貪欲に学んだモンテッソーリの教育哲学について、国際モンテッソーリ協会友の会NIPPON副理事長の深津高子氏は「モンテッソーリは、人間の健全な成長のためには、どんな環境が必要なのかを具体的に示した科学者である。よくモンテッソーリ教育のことを"Aid to Life"、つまり『生命が育つ援助』と呼ぶが、現在、モンテッソーリ教育が乳幼児期のみならず、小学校、中学校、高校、そして人生の最期である高齢者の認知症ケアにまで広がっていることを考慮すると、"Aid to Life"は『生涯にわたる援助』と言っても過言ではないだろう」(映画パンフレットより)と指摘している。

障害者の魂の健全性

この映画ではモンテッソーリがローマ大学付属の精神病院でジュゼッペ・モンテサーノ博士(彼女が独身で産んだ子供の父親)と共に障害児の研究を続けていた時期が中心に描かれており、実際に多くの障害児が出演している。

ピアノに合わせて、障害を持った子供たちが踊り、笑う。一人ひとりの個性や状況に合わせた適切な働きかけによって、埋もれていた力が開花し始める様子は圧巻だ。まるでドキュメンタリー映画を見ているような錯覚にとらわれるほど、子供たちが生き生きと変化していく姿が、実に見事に捉えられている。

モンテッソーリは子供を注意深く観察することで多くの発見をしたと言われているが、その観察とは魂に潜む限りない可能性への温かい眼差しでもあったのだろう。大川隆法・幸福の科学総裁は著書『エル・カンターレ 人生の疑問・悩みに答える 病気・健康問題へのヒント』の中で障害者の教育について次のように指摘している。

今生において知性に障害があったとしても、地上を去って天国に入ったときに、その障害は消えます。ですから、大丈夫です。むしろ、いいところをグーンと伸ばしておくことです。それが大事だと思います。

それによって、『この世的に頭のいい人たちよりも、はるかに進んだ心境になっていくことだってありえる』ということです

必要な時期に適切な教育を与えられさえすれば、障害を持つ子供たちは、誰も想像しないような生き生きとした成長を成し遂げることができる。その発見がモンテッソーリに、新しい教育方法を生み出す力と勇気を与えたのだ。

才能ある女性が背負う十字架

映画では、健常児の教育へと進出しようとするモンテッソーリと、あくまで障害児教育に限定しようとする、上司であり恋人でもあるモンテサーノ博士との対立が、彼女に究極の選択を迫るシーンがクライマックスになっている。

ローマに健常児向けの教育施設「子供の家」を設立しようとするモンテッソーリへの嫉妬もあって、モンテサーノ博士は意趣返しのように別の女性と結婚し、それまで郊外に預け、密かに養育していた自分たちの息子とモンテッソーリとの接触を禁じたのである。

結果、モンテッソーリはその後12年間、息子と会うことができなくなった。彼女は家庭を取るか教育改革を取るかの究極の選択を前にして「私は十字架を背負う。子供の権利を勝ち取るために戦う。それが私の使命。でもいつかあなたのもとに帰り、あなたに尽くす。私の息子。あなたに喜びを。私に苦悩を」と自らに言い聞かせ、ついにモンテッソーリ教育を完成させるのだ。

自らの内なる声に耳を傾けよ。自らの信念に、曇りなき正当性を感じたならば、あなたはあなたの信じた通りの生き方をするのみである。世人はやがてあなたの後ろをぞろぞろとついてくるであろう」(『原説・愛の発展段階説』より)

ピーター・ドラッカーや将棋の藤井聡太氏も受けたというモンテッソーリ・メソッドの創造ドラマを描いたこの映画は、振りかかる苦難と試練を"運命"として受け止め、「人類への奉仕」を我が喜びとする生き方の素晴らしさを教えてくれる。

 

『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』

【公開日】
全国公開中
【スタッフ】
監督:レア・トドロフ
【キャスト】
出演:ジャスミン・トリンカ
【配給等】
配給:オンリー・ハーツ
【その他】
2023年製作 | 99分 | フランス・イタリア合作

公式サイト http://maria.onlyhearts.co.jp/

【関連書籍】

エル・カンターレ 人生の疑問・悩みに答える 病気・健康問題へのヒント

『エル・カンターレ 人生の疑問・悩みに答える 病気・健康問題へのヒント』

大川隆法著 幸福の科学出版

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原説・「愛の発展段階説」

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大川隆法著 幸福の科学出版

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