2025年2月号記事

トランプ流インフレ退治法

バイデノミクスがつくりだしたインフレをトランプ氏はどう退治するのか。

トランプ氏当選で「事件」が起きた。金の価格が下落し、弱含みだったドルの価格が上昇。インフレは通貨価値が下落することから起きるので、トランプ氏登場で、通貨への信頼と安定が回復することを示した一件だった。株式市場も活況を呈し、市場は同氏の経済政策を評価している。

だが、そうした市場の評価とは裏腹に、トランポノミクスに異を唱えているのが、ノーベル経済学賞を受賞した23人の経済学者である。彼らは、大統領選の2週間前に、「関税や企業、個人に対する逆進的な減税は、物価上昇、財政赤字の拡大、格差の拡大につながる」として批判。一方、カマラ・ハリス氏の経済政策は、「競争を促して起業家精神を推進し、米経済力を強化するものだ」として、書簡で支持を表明した。その後も、ラリー・サマーズ元米財務長官を筆頭に、ケインズ主義の経済学者からの批判が止まらない。

だが、彼らの主張は妥当か。

バイデン政権は共和党側から「インフレ促進法」と揶揄された「インフレ抑制法」を成立させてバラマキを行った結果、9%を超えるインフレ率を記録。その後も学生ローンの免除など、貨幣供給量を増やすインフレ促進的な財政政策を続けた。そして、法人増税や価格統制などで米経済をさらに奈落の底に突き落とす、再分配主義的で共産主義的な政策を掲げていたのはハリス氏だった。


民意は「良識」に投票した

物価高で苦しむ米国民は、トランプ政権一期目の景況感を忘れてはいなかった。景気を良くする政策を持つのはトランプ氏だとして国民の良識が同氏の勝利をもたらした。

トランプ政権一期目は、減税政策が行われても、インフレ率は1.9%と抑制されていた

というのもトランプ氏の政策はすべてプロ・ビジネス(ビジネス寄り)だったからだ。石油の採掘を増やす政策を実施し、エネルギー供給量を増やす一方で、減税で「働く人」の手取りを増やし、彼らの仕事のやる気を高めた。見逃せないのはかつてないほどの規制緩和の実施だ。お金を低利で潤沢に借りられたとしても、規制の障壁があれば起業家のやる気を削いでしまう。同政権は、規制を導入する場合は必ず既存の規制を廃止した。減税とセットでプロ・ビジネスの環境を整えたのだ

結果、供給が増え、成長率はユーロ圏のそれを超え、国民の手取りは上昇。レーガン政権時同様、減税と規制緩和が行われ、消費が増えても、インフレにはならず、経済の好循環が起きた。


「抵抗権」を行使

これに加えてトランプ次期政権は、歳出削減に取り組む。増大する政府債務は、いずれ増税となって国民に襲いかかる。政府支出の抑制は国民の財産権を守り、「自由」を守るために、死活的に重要な政策だ。ハリス氏は、過去50年で最大の法人税率の引き上げを掲げ、財政赤字削減には関心を示さなかったが、国民はそうした民主党政権に対して「抵抗権」を行使したのだ。

では、なぜトランプ氏の経済政策は、インフレ抑制的だと言えるのか? そもそもインフレとは何か、トランプ氏の関税政策への誤解や、あるべき連邦準備制度理事会(FRB≒中央銀行)の政策について、専門家に話を訊いた。

※文中や注の特に断りのない『 』は、いずれも大川隆法著、幸福の科学出版刊。

 

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