《本記事のポイント》
- 「ローン不払いの波」が中国全土に広がる
- 世界的インフレの次の危機は「中国の不動産バブル崩壊」
- 2億8000万人の「貧困層」と私腹を肥やす共産党幹部
中国の経済危機が叫ばれるようになって久しい。同国経済の何が問題なのかを改めて考えてみよう。
習近平政権は現在、国内に「未完成ビル」(工事を停止して1年以上経つ未完成の建物)を山のように造っている。そのため多くのエコノミストは、経済はすでに"3つの危機"(不動産危機・銀行危機・地方財政危機)に瀕していると見なす。
特に、中国大手不動産会社のデフォルト(債務不履行)により、不動産バブル崩壊に直面しているという。
「ローン不払いの波」が中国全土に広がる
こうした状況について、エコノミストの呉嘉隆は、Facebookで次のように指摘した。
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中国の不動産危機はますます深刻化している。多くの資金が別途流用され、デベロッパーには建設を継続する資金がないため、「未完成ビル」が多数出現した。今日、多くの住宅所有者は住宅ローン支払いを停止したが、この「ローン不払いの波」は今や中国全土に広がっている。
実際、不動産市場に過剰な投資が行われ、過当競争の下、投資効率が低下した。目下、デベロッパーは、銀行からの融資を返済するための資金を回収できない。その結果、彼らはデフォルトに陥っている。
さらに習政権の「ゼロコロナ政策」により、失業の拡大、個人所得の縮小、中小企業の倒産の増加が起きた。そのため、住宅購入者はローンを支払う能力がなく、債務不履行に陥っている。不動産市場の縮小は、いわゆる「システミック・リスク」(個別の金融機関の支払不能等が金融システム全体に波及するリスク)を発生させる公算が大きい。
他方、地方政府は土地売買によって歳入を得る術がないため、財政危機が起きている。おそらく、不動産危機から発生した銀行危機と地方財政危機は、いずれ中央政府へ波及していくだろう。けれども、中央政府の財布も苦しく、地方政府の支払いを肩代わりして危機に歯止めをかけるだけの財政基盤を持たない。
中国共産党が好んで行う鉄道、道路、空港、地下鉄などのインフラ投資は、しばしば経済効率性を欠き、最終的に赤字となっている。習政権は、国内ではインフラ投資による経済効果が十分に得られないため、インフラを海外へ輸出した。しかし、一部の「一帯一路」国は、現在、"債務の罠"に陥り、スリランカのように「破綻国家」となっている。
一方、習政権は、米国との軍拡競争、及び「一帯一路」諸国からの債権回収に支障を来たし、「破綻国家」への道を突き進んでいる。中国の経済危機の背景には「不動産主導の経済成長モデル」の終焉があるのかもしれない。
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世界的インフレの次の危機は「中国の不動産バブル崩壊」
また台湾の『今周刊』を発行している謝金河はFacebookで、以下のように言及した。
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今年に入り、ロシア―ウクライナ戦争が勃発し、エネルギーと食糧価格が高騰した。そのインフレ圧力で、各国中央銀行が利上げしたり、米ドルの暴騰をもたらしたりしている。
そこで、巨大資本を持つ金融機関が貸付先を間違えると、首が回らなくなる危険性がある。とりわけ、ロシア、スリランカ、パキスタン、レバノン、ラオス、アルゼンチン、トルコ、ミャンマー等には注意する必要がある。
だが、次の大きな危機は中国の不動産バブル崩壊である。同国の不動産会社上位60社のうち、恒大集団、世茂不動産、融創中国、佳兆業、中国奥園など少なくとも15社が多額の負債を抱え、「決算報告書」を提出できない状況である。
これらの不動産会社が債務超過に陥った様相は、1997年、98年の台湾不動産バブル崩壊、90年の日本のバブル経済崩壊と比べて、もっと恐ろしいかもしれない。
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2億8000万人の「貧困層」と私腹を肥やす共産党幹部
ところで近ごろ、広州中山大学管理学院の李孔岳教授は、中国では9億4000万人の月収が2000元(約4万円)以下だと発表した。
かつて李克強首相が明言した月収1000元(約2万円)以下の6億人は、この範疇に含まれる。また、李教授は、月収600元(約1万2000円)の2億8000万人を「貧困層」と見なす。さらに、8億人が借金をしていて、少なくとも2億人以上が失業していると指摘した。
実は、中国共産党幹部は各種の交付金制度を持っているが、それらは一体、どこに消えているのか。6月23日、中国のある金融ブロガーがSNSに投稿し、20兆元(約400兆円)近い土地利権、5000億元(約10兆円)以上の住宅修繕資金、数百億元の民間航空発展資金、4000億元(約8兆円)以上の年間高速道路料金収入など、さまざまに挙げている。
このように、中国社会には多くの巨額の交付金が存在する。ところが、どこに使われているのか不明だ。富を国民から奪っているが、国民のために使われているのだろうか。
他方、中国のGDPは2010年に世界2位になったが、同年の1人当たりの所得は127位に過ぎない。これも、おそらく"データ改竄"後のランキングであり、1人当たりの所得はもっと低い可能性があるという。
アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師
澁谷 司
(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。
【関連書籍】
『ウクライナ問題を語る世界の7人のリーダー』
幸福の科学出版 大川隆法著
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