2020年10月号記事

Divine Economics

サプライサイド経済学の父 ラッファー博士

大恐慌の真の犯人は増税

Part 03

コロナ不況で大恐慌の足音が迫っている。1929年から始まった大恐慌を
時の政権にサプライサイド経済学の売り込みに孤軍奮闘する。
当代きっての米経済学者はどう見るか。大恐慌の真の原因について聞いた。

(聞き手 長華子)

トランプ大統領の経済顧問

アーサー・B.ラッファー

プロフィール

1940年生まれ。イエール大学を卒業後、スタンフォード大学で博士号を取得。経済調査とコンサルティングのラッファー・アソシエーション会長。サプライサイド経済学の父。レーガノミクス、トランポノミクスを導いた。大統領選挙中よりトランプ氏の経済政策顧問を務める。著書に『増税が国を滅ぼす』(日経BP社)、『トランポノミクス』(幸福の科学出版)などがある。

──前回は1970年代の不況についてお聞きしました。現在も、コロナ不況から景気が悪化し、大恐慌の再来を懸念する声もあります。博士は、29年から始まった大恐慌をどう見ていますか。

ラッファー氏(以下、ラ): その話に入る前に、大恐慌が起きる前のアメリカについてお話ししておきましょう。

当時のアメリカは「狂騒の20年代」と言われるほど、経済が活況を呈していました。その繁栄には、具体的な理由があります。

13年に導入された連邦個人所得税の最高税率は7%でした。ところが19年になると、第一次世界大戦を口実に、最高税率はなんと73%に引き上げられます。

このため20年の大統領選は、ウィルソン民主党政権が行った増税の是非を問う選挙となりました。

民主党の大統領候補は、オハイオ州知事のジェイムズ・コックス氏です。彼は友人のフランクリン・ルーズベルト氏を副大統領候補に据えました。共和党はウォレン・ハーディング大統領候補とカルビン・クーリッジ副大統領候補です。

コックス候補らは、第一次大戦の戦費の支出から生じた赤字を埋め合わせるために「高税率を維持する」と公約。これに対し、ハーディング氏らは「第一次大戦前の正常な状態に戻ろう」「第一次大戦前の税率に戻るべきだ」と国民に訴えかけた。それが国民の支持を得て史上最大の得票差で圧勝。21年に大統領に就任しました。

23年に減税が行われると、経済はかつてないほど成長し、生産、雇用、株価など、すべての指標が上昇。23年のハーディング大統領の急死によって副大統領から昇格したクーリッジ大統領も減税政策を続け、「狂騒の20年代」がやってきた。連邦政府の財政も黒字に転じます。不況に喘ぐヨーロッパと異なり、アメリカのみが繁栄を享受したのです。

〈左上〉ハーディング大統領。〈左下〉クーリッジ大統領。
〈右〉1926年NYのブロードウェイで開かれたオリンピックのメダリストを一目見ようと集まる市民。

次ページからのポイント

減税で連邦政府の財政も黒字に

増税とGDP成長率の落ち込み

増税しなければ恐慌はなかった