《本記事のポイント》
- 政府は、所有者不明の土地問題を解消するため、相続登記の義務化を進める方針
- 中国など外国資本による土地取得の問題も深刻
- 国民が負担なく土地を相続できるような税制が、国土保全につながる
所有者不明の土地が増えている問題について、政府は対策を急いでいる。
菅官房長官は19日、同問題の解消を目的とする関係閣僚会議で、2020年までに必要な制度改正を行うよう指示した(19日付読売新聞電子版)。相続登記の義務化や手続きの簡素化などを柱に、民法や土地基本法を改正する。法務省や国土交通省も関連法案を改正する方針を出しており、所有権の放棄を認める制度の創設や、土地所有者の責務の法的規定などが検討されている。
すでに、日本の土地のうち、九州の面積を上回る土地の所有者が不明だという(2016年時点)。40年には北海道の面積に迫る720万ヘクタールまで増えるとされており、早急に手を打つ必要がある。
外国資本の手に渡る日本領土
これに関連して、外国資本による土地所得も問題視されている。
本誌2019年3月号( 秘かに進む"新潟買収"計画 )や、2018年6月号( 中国に「爆買い」される北の大地 )でも扱ったように、北海道や新潟など、日本の土地が中国などの外国資本によって買収されている。
安倍晋三首相は15日の衆院本会議で、こうした現状について、「国家安全保障にかかわる重要な問題と認識している」「必要な施策を検討していく」と述べた。
相続したくなる税制が急務
日本の国土を守るには、土地の管理が急務だ。相続登記の義務化は、その一貫として理解できる。しかし、相続登記の義務化を進めるにあたって、「そもそもなぜ国民が相続登記をしないか」を考えるべきだろう。
結局は、受け継いでも"うま味"が少ないというのが、相続登記が進まない大きな原因だ。
例えば、代々住んでいる家を引き継いだとして、地価が高ければ多額の固定資産税を払わされる。かといって、価値の低い不動産を相続して、使う予定がない場合は買い手が見つかりにくく、使ってもいない土地の固定資産税を払うことになる。
「相続しない」のではなく、デメリットが多すぎて「相続したくてもできない」というのが、国民の本音だろう。経済活動を阻害する固定資産税のあり方を改革すれば、義務化などしなくとも、相続登記をする人は増えるはずだ。
国民が負担なく土地を相続できるような税制は、国土保全にもつながる。
(片岡眞有子)
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