2019年3月号記事

国造りプロジェクト Vol.04

20年で896の市町村が消える!?

「補助金いらず」の地方再生

日本には、人口減少、老朽化するインフラ、財政難などの課題が山積している。

国内で進む「見えにくい脅威」に対処し、税金だけに頼らない自治体のあり方を探る。

(編集部 山本慧、長華子)


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「あれ? ここに昔は店があったはず」「隣町の小学校が廃校になるみたい」──。

地方がじわりじわりと衰退している。日本の人口は、2010年(1億2806万人)をピークに減少へ転じ、50年には9708万人になると予想されている。40年までに、20~39歳の若年女性の人口が5割を下回り、人口が急減する可能性のある自治体数は896。 日本の約半数の自治体が"消滅の危機"に瀕する という(*)。

これに対し、安倍政権は「地方創生」の音頭をとるが、目立った成果はほとんどない。

(*)国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」。

財政難でインフラ維持できず

特に自治体の頭を悩ませるのは、人口減少と財政悪化のダブルパンチにより、図書館や道路などの老朽化したインフラを更新するお金がないことだ。 多くのインフラは、高度経済成長期に集中的につくられ、現在、更新時期を迎えている (図1)。

注目したいのは、水道だ。 水道管は毎年数万本破裂し、全国各地で断水を起こし、耐震対策も不十分であるなど、発展途上国のレベルに近づいている。

京都府では2011年、水道管が破裂し、隣にあったガス管内に水が流れ、約10億円の損害が生じた。昨年の大阪北部地震では、21万人以上が断水などの水道被害を受けた。

日本には、62万キロ(地球15.5周に相当)の水道の配管がある。東洋大学教授の根本祐二氏によると、1キロのパイプをつくり直すのに1億円かかるとすれば、すべてを更新するのに57兆円かかるという。

また、水道事業者は水道収入(約2兆7千億円)の約3倍の負債(約7兆9千億円)を抱え、税金の投入で維持されている。今後も維持するには、2046年度までに、63.4%の値上げが必要と試算されている(図2)。

私たちは 「蛇口をひねれば、水が出る」のは当たり前ではない ことを知り、インフラ問題を真剣に考える必要がある。

次ページからのポイント

改正水道法で負担を軽減

PPPで官の無駄をなくす

海外の失敗例はごく一部