母国の混乱を避け、ギリシャへの脱出を図るシリア難民。

中東のシリア問題において、アメリカとロシアの対立が鮮明になっている。

米国務省のカービー報道官は3日、シリア停戦に向けたロシアとの協議を停止すると発表。米露が主導してきたシリア停戦の枠組みが破綻した。

アメリカは、ロシアやシリアのアサド政権が、人道支援を妨げたり、医療機関などを攻撃したりしていると主張する。

一方、ロシアは、アメリカがアルカイダ系のイスラム過激組織「レバント征服戦線」をかばっていると批判。今回のアメリカの発表に対して、ロシア外務省は「極めて遺憾」と声明を出し、対立姿勢を強めている。

終わりの見えないシリア問題

シリア問題は、終わりが見えない。米露ともに「イスラム国」の掃討で一致するが、アメリカが反体制派、ロシアが体制側であるアサド政権を支持しているため、混乱を収めることが難しくなっている。

9月12日には、米露の主導で、アサド政権と反体制派が一時停戦に合意し、シリア内戦も落ち着くかと思われた。しかし、アメリカの主導する有志連合が、シリア政府軍に空爆したことにより、アサド政権は19日に停戦の終了を宣言。以後、事態が紛糾している。

今回のアメリカの協議停止の発表は、こうした状況を踏まえたものだった。

日本は独自外交で米露をけん引すべき

日本政府は、今回の米露の動きを危惧している。

日本はロシアに歩み寄り、12月には、安倍晋三首相とプーチン大統領の日露首脳会談も予定されている。日本はロシアとの平和条約締結交渉を進めたいが、アメリカが同盟国である日本に対し、ロシアと距離を置くよう求めてくる可能性がある。(5日付読売新聞)。

もちろん、その可能性は否定できないだろう。

だが、戦後70年以上が経った今、日本は、「どちらの国につくか」という発想から抜け出す必要がある。国力の面から見ても、日本は大国だ。自らの意志で独自の外交を進めなければいけない。

イスラム教スンニ派がつくる「イスラム国」も殲滅すべき対象ではなく、居住権を与えるなどの解決策が要る。

米露が混乱しているなら、むしろ、日本が「歩むべき道」を指し示し、国際社会をけん引するだけのリーダーシップを発揮すべきだろう。(片)

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