元少年Aの手記「絶歌」は「出版の自由」を超えた「精神的公害」
2015.07.06
1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件の加害者で、「酒鬼薔薇聖斗」と名乗っていた「元少年A」(32)の手記『絶歌』が、世間を騒がせている。
「元少年A」は14歳だった同年、小学生5人を襲い、10歳の山下彩花ちゃんと11歳の土師淳君を殺害するなどして兵庫県警に逮捕された。
同書の前半部では、「元少年A」が精神を病んでいく経緯や衝動、犯行に先立って行われた動物への残虐行為などが生々しく回想されている。後半部では、少年院を仮退院して以降の苦悩や悔恨がつづられている。
出版中止すべきか? 「出版の自由」か?
当然、社会的反発は大きい。
被害男児の父親は「少しでも遺族に対して悪いことをしたという気持ちがあるのなら、今すぐに、出版を中止し、本を回収して欲しい」とするコメントを発表。不買を呼びかける声も挙がっている。
こうした手記を出版することで、「元少年A」が印税を得ることも問題視されている。
それら批判に対して、憲法で保障されている「出版の自由」の観点から反論する声もある。
「狂気」を表現し、読者に再現させる著作
しかしこの出版行為は、「精神的公害」という観点からも見なければならない。
大川隆法・幸福の科学総裁は著書『Think Big!』(幸福の科学出版)で、悲劇性のある文学の悪影響について以下のように述べている。
「 特に私が述べておきたいのは、『"破滅型"の作家の作品をあまり読みすぎると、その考え方が、どうしても染み込んでくる』ということです。
例えば、何かを思い詰めて自殺した作家は、非常に純粋で、かわいそうな人であることもありますが、そういう人に入れ込みすぎて、その作品を繰り返し読み、自分のメンタルな面が、それと同じようなものになってくると、著者と似たような判断をし始めて、悲劇を求めていく傾向が出てきます 」
『絶歌』では、著者の反省や悔悟の念は語られている。しかし、残虐行為や精神を病んでいく具体的な描写は、読む人にその狂気をありありと感じさせるものになっている。
同書には「自己陶酔的な文章」「どのように罪と向き合ったかという内省が十分に書かれていない」「不快な読後感」という感想も多い。結局著者は、贖罪というより、自分の狂気を表現したかっただけではないか――。そんな疑いも拭えない。
精神的な公害という観点が必要
「狂気を再現する」本ならば、なおさら有害性は大きい。教訓とするためではなく、興味本位や刺激を求めて同書を読む人が増えれば、社会に「狂気」や「不幸感覚」を振りまく。同様の罪を犯す可能性のある読者の心理を、増幅させる可能性もある。
有害物質を含む食品を売り、製品製造の過程で公害を撒き散らす行為は、「営業の自由がある」と言っても許容されない。同じように、「表現・出版の自由がある」と言っても、「精神的な公害」という観点でも見る必要があるだろう。(光)
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