安倍首相がウクライナ訪問 ロシアとの関係強化も両立させよ
2015.06.08
安倍晋三首相が、日本の首相として初めてウクライナを訪問し、ポロシェンコ大統領と会談した。会談では、G7と連携して経済的支援を継続していくことを表明した。
一方、安倍首相はウクライナと対立を深めるロシア・プーチン大統領の年内来日を実現したい考えも崩していない。
これらは一見矛盾した外交政策にも見えるが、日本にとっては両方とも重要である。
そもそもウクライナ問題の本質は経済問題であり、経済的に困窮したウクライナがロシアにつくか、EUにつくかを明確に決断できなかったところから始まっている。今のところEUも破綻状態にあるウクライナを救うことはできていない。日本がウクライナを経済的に支援し、今後自立していくように促すことは問題の原因解消につながる。
だが、「日本がG7と共にロシアを封じ込めようとしている」という誤解を生まないよう、日本はロシアとの関係強化も忘れてはならない。
ロシアがウクライナに「介入」したことは、親ロシア派の保護、ならびに西欧諸国の勢力拡大を食い止めたいという国防上の理由が大きい。日本はこのロシアの事情を理解し、これ以上無駄な争いを生じさせないよう、G7とロシアの仲裁役を買って出る必要がある。さらには、ロシアを経済的にも孤立させないよう、日露で経済的な協力関係を築くことも大事である。
もちろん、日本がロシアとの関係だけを重視すれば、アメリカとの信頼関係が崩れ、日本の防衛の基軸である日米同盟が揺らぐ。
だが、日本がG7との関係を重視してロシアをないがしろにすればロシアは孤立し、中国との結びつきを強めるだろう。そうなれば日本にとってはロシアと中国という巨大な敵が間近に迫るという最悪のシナリオとなりかねない。
日露関係は、北方領土問題の解決という文脈で語られることが多いが、最も大事なことは「対中国」という視点である。
ウクライナ問題を解決しながら、ロシアとの関係も強化することが日本のとるべき道である。中露の連携は、G7にとっても望ましいことではあるまい。日本は、経済力、外交力を駆使して、世界の安定にも貢献していくべきだ。(佳)
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