米ニューヨーク・タイムズ紙がこのほど、アメリカ・ロシア・中国の複雑化する関係を紹介した。中国で開催されているAPECにおける、アメリカ国内の最大の関心事は、オバマ米大統領と習近平・中国国家主席との対話と両国の力関係だ。しかし最近、中国に接近するロシアの存在も話題になり始めている。

中露は5月に4000億ドルの天然ガス貿易協定を結んだが、APEC初日の今月10日、同規模の追加協定を締結した。欧米の経済制裁で苦しむロシアは、天然ガスなどの資源の輸出先、失われた欧米の資本や技術の代わりとなるものを探している。

一方、中国は、成長を続ける経済を養うための資源の確保と同時に、アメリカが仕掛ける中国包囲網を破るためにも、ロシアとの接近を望んでいる。

そんな中、オバマ政権は、ロシア政策を根本から見直している最中だ。しかし、アメリカ政府内部から出てくる情報には多少の混乱が見られる。

同紙によると、アメリカ外務省の中には、大きく「中露の歩み寄りは、アメリカの覇権と既存の世界秩序を揺るがすためのもの」という解釈と、「ロシアは、欧米から切り離されて仕方なく中国に接近した」という考えがある。この解釈の違いが、直接、対ロシア政策で「対立」と「対話」の違いにつながっているという。さらに、「中露は互いを利用しているだけで、関係は長続きしない」という指摘もある。

いずれにせよ、アメリカが中露の接近を警戒していることは確かだ。

また同紙は、ロシア内部にも、中国との接近を懸念する声があると指摘する。欧米に切り離されたロシアが、弱い立場で中国に接近し、同等でなく、中国の二番手という立場に置かれるのではないかという懸念である。現にロシアのエリート層の一部は、中国への依存は欧米への依存より危ういと指摘している。

だが、米露両国とも損をするような関係をつくり出しているのは、アメリカ側の大局観の欠如だろう。アメリカはウクライナという地域的な問題にこだわるあまり、中露の接近という世界秩序が不安定化する構図をつくり出している。

この米露の確執の象徴となっているウクライナ問題は、地政学的な課題に、国の威信や感情論が加わり、解決の糸口が見えない。日本は、アメリカのアジア回帰と中国包囲網が進むよう、ウクライナ問題を仲裁し、米露の関係を取り持てるだけの外交力を発揮すべきである。(中)

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