霊界の生まれ変わりセンターと人生のきらめきを描いた映画 「ソウルフル・ワールド」【高間智生氏寄稿】
2024.04.18
全国公開中
《本記事のポイント》
- 出生前に魂は霊界の「生まれ変わりのセンター」でレクチャーを受けてくる。
- 執着の虜となって"心を失った状態"になりがちな現代人への警鐘
- この世と霊界を貫いて万象万物を生かしめている「原因と結果の法則」としての創造神
ニューヨークでジャズ・ミュージシャンを夢見る音楽教師ジョーは、夢が叶う直前にマンホールに落下して命を落としてしまう。地上に未練が残る彼が迷い込んだのは、魂(ソウル)たちが地上に生まれる前に「どんな自分になるか」を決める世界だった。
そこでジョーが出会ったのは、やりたいことを見つけられず、"人間に生まれたくない"と何百年もソウルの世界に留まっている"22番"と呼ばれるソウル。夢のために地上での人生を取り戻したいジョーは22番に協力を求めるが……奇跡の大冒険を繰り広げる二人が、最後に見つけた「人生のきらめき」とは。
2021年のアカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞した、ピート・ドクター監督作品。コロナウイルス感染症の影響により劇場未公開だったが、同監督の『インサイド・ヘッド2』が8月1日に全国公開されるのを記念して、全国で劇場公開されている。
ドクター監督は、亡き妻との思い出が詰まった家を風船で浮かせて大冒険に出る老人を描いた『カールじいさんの空飛ぶ家』(2009)、子どもの心の成長を擬人化して描いた『インサイド・ヘッド』(2015)、そして本作と3作品でアカデミー賞長編アニメ賞を受賞。荒廃した地球でゴミ処理を続けるロボットの映画『ウォーリー』(2008)でも原案を担当している。ハリウッド・アニメの頂点を極めた同監督が「23年もの歳月をかけた」という"入魂(ソウルフル)"の一本だ。
出生前に魂は霊界で、「生まれ変わりのセンター」でレクチャーを受けてくる
霊界に存在する「生まれ変わりのセンター」について説かれた文献は、大川隆法・幸福の科学総裁の著作を除くと世界的にも皆無に近く、本作はこの"知られざる場所"に焦点を当てた貴重な作品だと言える。
なかでも、ここで人生の使命や課題を設定し、霊界に帰還してきた先輩から個別にレクチャーを受けるなど、生まれ変わってくる前の魂の教育についての設定が、霊的真相にかなり近いのは興味深い。
大川総裁が子供向けに執筆した著作『光の子』では、この生まれ変わりセンターについて、こう説かれている。
「この世に人が生まれ変わってくるためには、あの世でも、お役所のようなところで、ちゃんと登録して、お父さんお母さんになる人を選び、順番を待たなくてはいけないんだ。実際、あの世では、親子の約束をして、生まれ変わりセンターのようなところで、まゆにくるまれたような状態になって、天上界から、お母さんのお腹の中に降りてくるんだ」
「だから、『頼んでもいないのに、親が勝手に産んだ。』と言うのはまちがいなんだ。みんなちゃんと、『親子になってね。』と、お願いしているんだ」
「魂」としての人間は、あの世でも、一人一人が実に大切に扱われているということは、とても大切な宗教的真理である。
ただし本映画では、霊的な真理としての転生輪廻についてまでは、言及されてはいない。また、人間の"魂の傾向性"が幾転生もの地上人生の積み重ねによって形作られたものであることにも理解が届いているとはいいかねる。そもそもキリスト教自体に転生輪廻という真実が欠けているので、仕方のないことではあるのだが。
執着の虜となって"心を失った状態"になりがちな、現代人への警鐘
本作のとても面白い点は、地上で生活するなかで、ある対象に熱中しすぎることで、"執着の虜"になり、魂としての健全さを失ってしまった状態が描かれている点だ。
映画の中では、投資銀行のトレーダーと思われる人物が仕事に熱中するあまり、周囲への関心を失い、魂が真っ黒な炭のようなほこりで覆われてしまい、薄暗い砂漠のような荒野をさまよっている姿が描かれている。
仏教的には、「執着の恐ろしさ」とも言えるだろうが、物質万能・科学万能の現代社会で、人間の本質である心を見失ってしまうことが、霊的にどう見えるのかを的確に捉えているようでおもしろい。人間の心の諸相を巧みに描いてきたドクター監督の力量を感じさせるシーンだ。
この世と霊界を貫いて万象万物を生かしめている「原因と結果の法則」としての宇宙神
やりたいことを見つけられず、"人間に生まれたくない"と何百年もソウルの世界に留まっていたソウル"22番"は、ジャズピアニスト・ジョーの"魂"と逃走劇を繰り広げるなかで、思いがけず地上でジョーの肉体に宿ってしまう。そこで"22番"が、経験する"生きることの素晴らしさ"が本作のクライマックスだ。
「人はなぜ生きるのか」「苦しみや悲しみにいかなる意味があるのか」「人間が生まれ、死んでいくことを支えている神仏と呼ばれる大いなる存在とは何か」──。ドクター監督は本作において、木々がその葉を散らし、種子を実らせ、次の命を着実に準備していくシーンによって、人生の真実の一端を見事に描いているとも言える。
そこには、大宇宙を創造し、万象万物の生命を生かしめている創造神が、大宇宙を貫く"原因と結果の法則"そのものでもあるという真実も垣間見えている。ハリウッド・アニメの名匠として冴えを見せる同監督の今後が楽しみだ。
『ソウルフル・ワールド』
- 【公開日】
- 全国公開中
- 【スタッフ】
- 監督・脚本:ピート・ドクター
- 【配給等】
- 配給:ディズニー
- 【その他】
- 英題:SOULFULL WORLD | 2020年 | アメリカ | 100分
【関連書籍】
『霊界散歩』
大川隆法著 幸福の科学出版
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