釈量子の志士奮迅 [第134回] - どうなる北朝鮮問題──関係正常化を急ぐ前に岸田首相がすべきこと
2024.03.28
2024年5月号記事
幸福実現党 党首
釈量子の志士奮迅
第134回
幸福実現党 党首
釈 量子
(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
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どうなる北朝鮮問題
関係正常化を急ぐ前に岸田首相がすべきこと
サッカー・ワールドカップ予選における日本対北朝鮮の試合が話題になりましたが、同時に取り沙汰されているのが、岸田文雄首相と金正恩総書記との直接対話の可能性です。
岸田首相は政権発足時から首脳会談について口にしてきましたが、拉致問題がネックとなり膠着状態でした。しかし年初、能登半島地震後に金氏より、「日本国総理大臣岸田文雄"閣下"」宛という異例の見舞い報が送られ、2月には金与正・朝鮮労働党副部長が、日本が政治的な決断を下せば、「平壌を訪問する日が来るかもしれない」と談話を発表しました。岸田首相はその実現に意欲を見せ、実務者レベルで接触が水面下で始まっているとも報じられています。
裏金問題で追いつめられた首相としては、日朝関係の進展を政権浮揚の切り札にしようとしているのでしょうか。
しかし北朝鮮とアジアの情勢を見据えた時に、日本政府は拙速に金氏と握手をしに行くよりも先に、急ぐべきことがあるのではないでしょうか。
戦争の危機が迫る
北朝鮮が近づいてきたのは、体制がそれだけ追いつめられているからかもしれません。
韓国統一部が脱北者約6千人から行った聞き取り調査によれば、北朝鮮で「食料配給を受けたことがない」と回答した人が7割を超え、配給制度が崩壊している実情が明らかになっています。その生活苦のあまり、6割が金正恩体制に反感を持っていたと回答しています。こうした経済状況を受け、北朝鮮は日本に制裁解除や経済支援を引き出すことを狙っていると見られます。
国内の惨状と対称的に、韓国への憧れを持つ人が急増しており、そうした人を中心として昨年、100件を超える反体制事件が起きるなど、国を揺さぶる事態になっているとも指摘されます。
一方、今にも戦争を始めんとするかのような、対韓国政策の大転換をもたらしていることにも、注意を払う必要があります。金正恩氏が昨年末、「北南関係はもはや同族、同質関係ではない」と宣言し、"同族による平和統一路線"をかなぐり捨てたことが波紋を呼びました。さらに韓国を「不変の主敵」と憲法に書き込むと言い、平壌の「祖国統一3大憲章記念塔」を撤去し、延坪島(ヨンピョンド)、白翎島(ペンニョンド)の北の境界線付近では砲弾を猛射しました。
念願の核保有国となり、ロシアのプーチン大統領から「北朝鮮が独自の核の傘を備えている」と"お墨付き"を得るなど、軍事的に自信を深めているとも見られます。
北朝鮮の政策転換は、実際に最終手段としての戦争を始める準備だと見る向きもあります。そんなことをすれば米韓の報復で体制が崩れかねないという見方もありますが、世界の紛争多発で情勢が有利になり、指導者が「もはや選択肢はない」と思えば、危険なゲームの賭けに出ることは、充分あり得ます。
核も使用されることも想定すべきです。大川隆法・党総裁は「『核戦争の危機』は、久しぶりにすごく近いところまで、今、来ています。北朝鮮関係だって、いつ始まるかもう分からないのです」と警告しています(『真実を貫く』)。
今はプーチン氏と話をつける時
その時、日本も他人事ではいられません。北朝鮮はロシアとも準軍事同盟状態に入りつつあり、北海道や東北などへの"威嚇"との連鎖、あるいは中国による台湾・沖縄への軍事行動と同時多発といった事態が想定されます。
もちろん金正恩氏はアメリカのトランプ再登板を見越して暴れているのであり、体制保障と引き換えに「開国」への流れができる──というシナリオを心から祈りますが、政治の責任としては最悪に備えるべきです。絶対にあってはならない話ですが、北の核をアメリカが認めれば、その先に待つのは日本の属国化です。
今、日本に必要なのは、支持率ほしさの「下心」で金正恩氏に"頭を下げ"に行く前に、バイデン米政権に追随したロシア敵視政策を転換し、プーチン氏と話をつけることです。それが、中国をけん制し、北朝鮮を押さえることにつながります。そして、核保有を含めた国防強化や憲法改正の動きを加速させ、「武士道の国」として生まれ変わることに注力することが、目下、最優先事項です。
金正恩氏は戦争準備に入っているともみられる(画像:Alexander Khitrov / Shutterstock.com)。
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