釈量子の志士奮迅 [第103回] - 中東を"攻める"中国
2021.04.29
2021年6月号記事
幸福実現党 党首
釈量子の志士奮迅
第103回
幸福実現党 党首
釈 量子
(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
https://shaku-ryoko.net/
中東を"攻める"中国
アメリカの政権が変わり、世界のパワーバランスが中国優位に傾き始めました。それに伴い、各地で価値観が揺らいでいます。
なかでも、中国に大きくなびきつつあるのが中東です。
中国と中東は「非民主的」という点で共通しています。トルコなど民主的とされる国も、内実はかなり異なります。中国は、ウイグルや香港の人権弾圧で欧米から非難される中、同じく人権問題で共闘できる中東を味方につけようと動いているのです。中国の王毅外相は3月末、中東6カ国を歴訪。経済協力や新型コロナウィルスのワクチン協力などをテコに、各国との関係強化を進めました。トランプ氏に抑えられていた国々を、オセロの如くひっくり返しに行ったのです。
中国に急接近しているのが、アメリカの制裁で瀕死の状態であるイランです。中国と今後25年に渡る包括的な軍事・経済の長期プランを締結し、全面的に中国が助けに入ります。
昨年夏にリークされた内容では、中国がインフラ・技術開発に協力・投資する見返りとして、イランから原油を安価で購入することになっているようです。
またイラン地元メディアによると、中国はイランからキーシュ島を25年間借り、ペルシャ湾に人民解放軍の兵士を最大5000人駐留させられるようになるといいます。さらに、ホルムズ海峡を押さえられる戦略的要衝であるジャスク港にインフラ投資し、軍事拠点化する可能性もあるといいます。
ドル覇権に挑戦!?
中国とイランが「中国イラン銀行」を設立するとの報道もあります(*1)。中東での人民元取引を拡大させ、米ドル覇権に挑戦する意図でしょう。現在、世界の貿易や金融は米ドルを中心に取引されています。これが、アメリカの軍事力や経済力に並ぶ力の源泉です。中国やイランにとって、この体制を破ることは、利害が一致しています。イランのライバル、サウジアラビアでは、王毅氏が「カショギ氏暗殺事件」で窮地に追い込まれたムハンマド皇太子と会談し、中国のエネルギー確保を約束しました。
中東を中国に追いやったのは、バイデン氏の政策転換です。トランプ政権では表に出なかったアメリカの情報機関の報告書を公表し、皇太子の警備隊など76人に制裁を科したのです。
今後、サウジアラビアから中国に輸入される原油が人民元で取引される可能性も高く、世界最大の貿易商品である石油が人民元決済となれば、ドルの通貨覇権が揺らぎます。
意外だったのが、アラブ首長国連邦(UAE)です。昨年、トランプ政権の仲介でイスラエルと国交正常化を果たしたばかりでありながら、驚くべき変わり身の早さです。国内に中国製ワクチンの生産拠点を造ることを決めました。中東のハブ国家として、ワクチンは不可欠と見たのでしょう。さらに、中国人民銀行と協力し、デジタル人民元の越境決済システムの研究を行うとしています。中東随一の金融センターに元通貨覇権の拠点ができることになります。
トルコも中国の股の下をくぐりました。同国は、ウイグル人と同じトゥルク系民族の国。エルドアン大統領(当時は首相)は2009年、中国・新疆ウイグル自治区での弾圧を、「一種のジェノサイドだ」と非難していましたが、18年の通貨危機もあって、習近平賛美に一転。亡命ウイグル人の取り締まりも強化しつつあります。私の友人のウイグル人女性はトルコに亡命したのですが、本当に心配です。
かくして中国は、アメリカの弱体化や外交政策の隙に付け入り、それぞれの国の苦境に手を差し伸べる"救世主"として、世界に触手を伸ばしています。
(*1)3月30日付米ウォール・ストリート・ジャーナル紙。
日本がリーダーシップを
中東を共産主義・唯物論勢力側につかせないために、役割が大きいのは日本です。親日国も多く、「サムライ外交」で、リーダーシップを発揮することが求められているのです。しかし日本の政治家は、外面をつくろって自己保身に走る「画皮」や「天狗」が跋扈しています。幸福実現党は、イスラム圏の衝突を終わらせることも使命と考えています。
根本解決には、新たな世界宗教の誕生が待ち望まれることとなるでしょう。「自由・民主・信仰」こそ地球神の願われる世界です。常に世界と未来について考え続けようではありませんか。大川隆法党総裁の「『世界性』を心に抱け」(*2)という言葉を胸に、精進を続けてまいります。
(*2)大川隆法 英語説法シリーズ(5)『The Human Condition/Beyond This World』(お問い合わせは、幸福の科学まで)より。
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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