「十年」 ン・ガーリョン監督インタビュー- リバティWeb シネマレビュー
2017.06.29
2017年8月号記事
リバティWeb シネマレビュー
「十年」
香港の自由を守れるか
中国の影響力が一層強まった未来が、5話の短編で描かれる。香港政庁前での焼身自殺事件、香港で使われている広東語が通じなくなる話、禁書を扱う書店が人民服を着た子供たちの攻撃に遭うエピソードなど、どれもフィクションだがリアリティがある。
- 【公開日】
- 2017年7月22日、新宿K's cinema ほか全国順次公開
- 【配給等】
- 配給/スノーフレイク
- 【スタッフ】
- エグゼクティブ・プロデューサー/アンドリュー・チョイ(蔡廉明)
- プロデューサー/ン・ガーリョン(伍嘉良)
- 監督/クォック・ジョン(郭臻)、ウォン・フェイパン(黄飛鵬)、ジェヴォンズ・アウ(歐文傑)、キウィ・チョウ(周冠威)、ン・ガーリョン(伍嘉良)
ザ・リバティWeb シネマレビュー
「十年」
(星4つ。満点は★5つ)
プロデューサー・監督
伍嘉良 監督
(ン・ガーリョン)1981年生まれ。香港理工大学デザイン学部卒業。映画とテレビドラマの製作に携わり、2012年には市場に関するドキュメンタリーシリーズの製作や座談会などを行うプロジェクトを立ち上げた。14年、香港の人々が未来を考える場をつくるため本作のプロジェクトを立ち上げた。
自主製作映画にもかかわらず口コミで大ヒットし、香港のアカデミー賞「香港金像奨」で2016年の作品賞を受賞した「十年」。中国政府によって自由が失われていく香港の10年後を描き、賞賛された一方で、中国メディアは「思想のウィルス」と酷評するなど話題を呼んだ。
7月22日の日本公開を前に、プロデューサーと監督をつとめた伍嘉良氏に話を聞いた。
◆ ◆ ◆
――本作が日本で公開されることをどう感じていますか。
伍監督(以下、伍): この映画は、エンターテインメントでもスターが出演している大作でもなく、本当に地元香港だけを描いた作品です。それが2016年に日本の大阪アジアン映画祭で上映されると、たくさんのメディアの方が取材に来てくれました。また、観客のみなさんが鑑賞後に話している内容を聞いて、この映画には大きな意義があったと感じました。
というのも、みなさんが自分たちの地元の10年後を想像しながら観て、話し合ってくれたからです。
今の決定が10年後を決める
――香港で公開されてから2年経ち、中国の締め付けはますます強くなっています。
伍: この映画は、ある意味、政治的な予言でもあります。でも、その予言が当たったとか当たらなかったといったことは、あまり気にしていないんです。
確かにこの2年間、香港の状況は好転していません。権力はどんどん肥大化しています。しかしそうした中で大事なことは、「現在の自分の決定が、10年後、どういう影響を及ぼすか」を考えることだと思っています。この映画を観た人がそれを考えるようになれば、予言が当たるよりも価値あることだと思います。
何が正しいのかを見極める
――香港の自由を守るために、これから何が必要と考えますか。
伍: 今まで多くのことが、政府に操作されて、市民は洗脳されているような状態でした。
例えば、香港の不動産価格が高いことについても、香港は人が多くて狭いからだと言われてきました。しかし実際には、中国本土の富裕層や開発業者が買っているためだとわかりました。
一般的に言われている"定義"が正しいのか間違っているのか。それを市民が見極められるようにすることが大事なのではないかと思います。そのために市民が団結していくことが、香港を守ることにもつながります。
今後も、こうした問題意識を大切にしながら作品をつくっていきたいと思っています。
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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