中国の習近平国家主席と韓国の朴槿惠大統領が、韓国で首脳会談を行った。会談後に発表された共同文書では、自由貿易協定(FTA)の年内妥結に言及し、両国の蜜月関係をアピールした。
両国の首脳は、これまでに5回の会談を重ねるなどして関係を強化する一方、拉致問題の交渉を進展させている日本と北朝鮮の動きを煙たがっているようだ。昨年12月、北朝鮮の金正恩・第1書記が、中朝のパイプ役だった張成沢氏を処刑して以降、北朝鮮と中国の関係は悪化。内政が混乱する韓国は、中国に擦り寄っている。
このような状況について、日本のマスコミは、「日朝対中韓」という構図を描き、神経戦に突入していると報じる向きが強い。しかしそこには、日本が東アジア外交でイニシアティブをとるために、引き込むべき重要な国の存在が見落とされている。それは、「ロシア」である。
ウクライナ問題以降、日ロ関係は距離ができ、今月、岸田文雄外相がウクライナを訪問する予定があるが、すでに、あまり成果は期待できないという声が上がっている。国営メディア「ロシアの声」も、「岸田外相は、訪問の結果で米国ともロシアとも喧嘩しないような奇跡のバランス外交の曲芸を示さざるを得ない」(3日付日本語版)と指摘する。
だが、日ロが、必ずしもウクライナ問題で思惑を一致させられなくても、東アジアの現状をきっかけに関係改善を図ることはできるだろう。
日本のマスコミでは、あまり注目されていないが、ロシアは北朝鮮との関係も前進させている。韓国の聯合ニュースによると、北朝鮮を訪れているロシア国防省の中央軍楽団に対し、金正恩氏は「朝ロ親善関係のさらなる発展を期待する」(同日付電子版)とメッセージを伝え、朝ロ関係の強化を強調した。
また、金正恩氏のロシア訪問の可能性を指摘する識者もいる。それを考慮すれば、現時点では、日本が、北朝鮮との関係を上手く利用することで、ウクライナ問題で関係が冷え込んだロシアとの関係を前進させられるかもしれない。
いずれにしても、日本にとって、中国、韓国、北朝鮮は友好関係を結ぶべき隣国ではあるが、いつ何時、歴史問題などでケンカを吹っかけて来るか分からない難しい相手だ。今、日本は、ロシアを味方につけることで、東アジアのパワーバランスを保つことができるのである。(森/慧)
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