日本政府が北朝鮮への経済制裁の一部を解除したことに注目が集まっている。

北朝鮮は日本人拉致の全面調査を約束し、今後、特別調査委員会を設置することを発表した。同委員会の設置に伴い、日本政府は北朝鮮に科してきた独自の経済制裁の一部を解除。まず解除されるのは、北朝鮮への送金の制限や、人的往来の特別な規制措置、北朝鮮籍の船舶の日本への入港禁止措置の一部だ。調査の進展に従って、適切な時期に経済制裁を段階的に解除していくという。

今回の調査では、これまでの調査での対象が、日本政府認定の拉致被害者に限られていたのとは異なり、拉致が疑われる特定失踪者470人も含まれている。調査結果を出しやすくなるため、北朝鮮の調査に対するインセンティブが働くと期待されている。

もちろん、北朝鮮はすでに4回の調査を行い、関係者の証言は二転三転してきたことから、日本国内でも楽観すべきではないとの見方は強い。また、核実験を続ける北朝鮮への経済制裁で足並みをそろえてきたアメリカと韓国も、日本が先行して制裁を解除することに警戒や困惑をしていると見られる。

しかし、注目すべきは、「拉致問題は解決済み」という従来の強硬姿勢を崩してまで、経済制裁の一部解除を日本に求めざるを得ない北朝鮮の困窮ぶりだ。

昨年末に、中国とのパイプ役だった張成沢氏を粛清してから中国との関係は急速に悪化。中朝貿易額は激減し、中国からの原油の供給もストップしているという(5月30日付産経新聞)。頼みの綱だった中国に見捨てられれば、北朝鮮の崩壊は時間の問題と言える。日本に支援を求めるという異常事態は、朝鮮半島の不安定さを物語っているのだ。

その意味でも、日本は拉致問題を早急に解決する必要がある。それに、今回の日本の動きは結果的に、昨年から日本バッシングを続けてきた韓国に対する牽制にもなる。北朝鮮が暴発した場合、日本とアメリカを頼るしかない韓国にとって、日本と北朝鮮が近づくことは脅威だろう。

いずれにしても、北朝鮮は3代目で終わる可能性が高まってきた。朝鮮半島の悲劇を、これ以上長引かせるべきではない。(居)

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