《ニュース》
トランプ政権が求める多様性政策の見直しなどを拒否したために、連邦政府からの補助金などが凍結されたことを受け、ハーバード大学が連邦地裁に、「凍結は違法」だとして提訴しました。そうした中、連邦政府から補助金を受け取っていない私立大学の学長の発言が注目を集めています。
《詳細》
トランプ政権は、アメリカ国内の大学から、特定の人種や性的少数者の比率を引き上げるといった「多様性・公平性・包括性(DEI)」の理念を排除することを目指し、応じない大学に対して連邦予算支出の凍結を進めています。
ハーバード大学に対しては4月11日に、DEIの理念が反映された教育プログラムや入学選考基準、職員の採用方式を「能力本位」に見直すことや、学内での「反ユダヤ主義」の取り締まり強化を求める書簡を送付していました。
ハーバード大はこれを受け、「私立の教育機関としての学問の追究、創出、普及に専念する当大学の価値」を脅かすとして、要求を拒否する公開書簡を発表。その数時間後にトランプ政権は、連邦政府からハーバード大への23億ドル(約3300億円)の連邦補助金や契約を凍結すると発表しました。
さらに、トランプ大統領は15日、ハーバード大学について「公教育のみのために運営されている」という条件で認められてきた免税資格を取り消し、「政治団体」として課税する可能性に言及。当大学が、マルクス主義や極左思想を広めているとして批判しています。
さらに20日にはトランプ政権が新たに、ハーバード大への政府支出を10億ドル(1400億円)削減することを検討していることも報じられました。こうした応酬の中で、ハーバード大は21日、マサチューセッツ州の連邦地裁に凍結を無効とするよう求める訴訟を起こしました。
一連の応酬の中で注目されたのが、ハーバード大が公開書簡で「いかなる政府も私立大の学問の自由に介入すべきでない」と発言したことについて、ミシガン州のリベラルアーツ・カレッジであるヒルズデール大学がSNS上で「他の方法がある。納税者のお金を受け取らないこと」と発言したことでした。
ヒルズデール大学は、信教の自由を擁護し、自由意志を重んじるフリーウィル・バプテスト派が設立しており、連邦政府からの資金を受け取らずに運営しています。
同大学のラリー・アーン学長は20日付米ウォール・ストリート・ジャーナル紙のインタビューで、ハーバード大が1636年の創立以降、250年は民間資金のみで運営されてきたこと、連邦政府は1960年代ごろまでは教育制度に大きな影響力を持っていなかったことを指摘し、「連邦政府の資金援助を断念するには、規模が大きすぎるのだろうか?」と問いかけています。
また、一連のハーバード大学の対応について、「資金を受け取る権利と、やりたいことを何でもする権利の双方を憲法で保障されていると主張している」と批判。ハーバード大で横行する反ユダヤ主義への嫌がらせを念頭に「人種や宗教が理由で安全ではない状況にある学生もいる」にもかかわらず、「納税者が資金を負担すべきなのか」と疑問を呈しています。
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