澁谷 司

アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

2月4日、トランプ大統領の対中追加関税発効に対し、中国共産党の対米報復措置が発せられた。だが、もしかすると、習近平政権はトランプ氏と米国の意図について、読み違えている面があるのではないか(*1)。

(*1)2025年2月4日付『中国瞭望』

中国の報復関税リスト

北京の報復関税リストでは、第1に石炭と液化天然ガスへの15%の関税、第2に原油、農業機械等への10%の関税がかけられているが、これらは総額でも200億米ドル(約3兆円)未満である。

対象となる財の現状の輸入規模としては、2024年の米国産液化天然ガス輸入額が24億1500万米ドル(約3622.5億円)、石炭が19億8300万米ドル(約2974.5億円)、原油は60億1900万米ドル(約9028.5億円)。米製ピックアップトラックや大型排気ガス車等については、詳細が開示されておらず、自動車(車台を含む)の輸入は合計約4億米ドル(約600億円)にとどまる。その他、農業機械の輸入は、世界のすべての国からのものを含んで、合計6億9000万米ドル(約1035億円)だ。

一方、トランプ氏は800米ドル(約12万円)以下の越境する小包に対する関税免除を取りやめたが、これだけでも、影響を受ける中国製品の額は5000億米ドル(約75兆円)近くになる。

中南海は対米強硬姿勢を見せているが、実際は、米国へ本格的に報復したいわけではなく、カナダやメキシコのように、2月10日までに米国と合意に達し、貿易戦争を回避することを望んでいたのではないか。

関税は貿易戦争ではなく"麻薬戦争"