2024年3月号記事

世界の「脱炭素疲れ」が始まった

世界を席巻したかにも見えた「脱炭素」の流れは、深刻なエネルギー危機にもつながり、各国で見直しの動きが進む。日本も、方向転換の時だ。

INTERVIEW

目覚めろ日本!

欧米は脱炭素を後悔し始めた

キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹

杉山 大志

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(すぎやま・たいし) 北海道生まれ。東京大学物理学科卒、同大学院工学研究科物理工学修士了。電力中央研究所を経て2017年より現職。国連気候変動に関する政府間パネル、産業構造審議会等の委員を歴任。近刊に『亡国のエコ』(ワニブックス)など。

各国政府が推進してきた脱炭素政策が、結果として世界的なエネルギー危機につながり、その非現実性が一気に認識されつつあります。

脱炭素がエネルギー危機を起こした

例えば欧州は極端なグリーン政策を進め、石炭火力発電所の閉鎖を加速させたり、国内で化石燃料が採れるにもかかわらず、その開発・投資を止めたりする、ということをしてきました。

代わりに太陽光発電や風力発電などを大量導入しましたが、それで大きな電力需要を安定的に賄えるはずもありません。急進的な脱原発政策も手伝って、必然的にロシアの天然ガス輸入に依存する構造になっていました。

そこに発生したのが、ロシア―ウクライナ戦争でした。欧州は結束して資源の禁輸に踏み切り、結果として深刻なエネルギー不足に陥ったのです。光熱費は高騰し、貧困層には冬に煖房が使えず亡くなる人が出ることも懸念され、あらゆる産業に波及してインフレが深刻化しました。