《本記事のポイント》
- 学校は保護者に代わって子供の未来を決める権限を持つのか?
- 「学校選択制」が各州で導入され始めた
- 教育も減量しては?
アメリカで革命的な運動が水面下で起きている。「学校選択制」である。
学校選択制とは、子供たちが学区の枠に縛られることなく、希望する学校を選べる制度。1950年代から自由主義の経済学者ミルトン・フリードマン氏等が提唱してきた制度であり、公立学校にも競争原理を取り入れ、学校の質を上げようとする試みである。
近年、アメリカの学校教育の腐敗は激しい。算数や国語の基幹科目を疎かにして、性少数者差別撤廃を重視する教育を徹底したり、コロナ禍で学校を閉鎖したりする州も多かった。結果、昨年の秋に行われた全米学力調査(NAEP)で、全米のどの州でも公立学校で学力が低下したことが判明したのである。
学校は保護者に代わって子供の未来を決める権限を持つのか?
NGO団体「教育を守る親の会(Parents Defending Education)」が3月に発表した調査によると、子供たちが「性の移行(男性から女性、女性から男性への移行)」を行う際に、学校のスタッフが、保護者にそのことを隠す学校が6000校もあるという。
330万人の子供たちがこの学校の方針の影響下にあることを考えると危惧すべき事態である。しかも、これは民主党系の青い州だけに限られたことではない。
この公立学校の方針で犠牲となり、1人の女子生徒が悲劇的な死を遂げた。これについて米ヘリテージ財団のカトリーナ・トリンコ氏が報じている。
「自分自身の性に自信が持てなくなったある女生徒の悲劇である。LGBTQのクラブに出入りするようになっていたヤェッリ・マルティネヅ氏は、女性の名前から男性の名前に変えたいと学校で申し出て、スクール・カウンセラーに認められた。しかし、彼女の両親には一報も入れられず、娘の友人を通してたまたま娘の性転換の希望を知ることになる。
心配になった両親は娘とこの問題を話そうとしたが、学校の心理カウンセラーは、彼女に家を出ることを薦める。男性名に変え、ホルモン療法を受け始めたが、最終的に19歳で自殺をしてしまう」
彼女は、自分が女性であることに疑いを持ち始める前に、鬱症状に苦しめられていたという。鬱症状が性同一性の問題にすり替えられ、憑依(*)が悪化して自殺に至った可能性がある。
悲劇的であるのは、学校のスクール・カウンセラーから彼女の両親に何ら共有がなされなかったことだろう。事実上、両親は、子供を公教育に預けた段階で、彼女を守る選択を失ってしまったことになる。
だからこそアメリカでは、親は学校でどのような教育が行われているのか、性自認についても、学校の官僚に任せきるのではなく、自分で選択をしたいと考えているのである。
(*) 幸福の科学の霊査で、LGBTQの人々の多くが、憑依霊の影響を強く受けていることが分かっている。
「学校選択制」が各州で導入され始めた
ウェストバージニア州やアリゾナ州などに続いて、共和党系の州のアイオワ州、ユタ州、アーカンソー州が「学校選択制」に関する法律を成立させた。
たとえばアイオワ州では今年の秋から、子供一人当たりにつき7598ドル(約99万5000円)を受け取り、自分たちが選択する学校の学費やオンライン教育の費用に充てることができるようになる。ユタ州では、同じく子供一人当たり8000ドル(約105万円)で、私学を含めた選択や、家庭で親が教育するホームスクーリングの費用に使うことができる。アーカンソー州では、子供一人当たりにつき6000ドル(78万6000円)が支払われる形だ。これはこれまで州政府が一人当たりの子供に支出してきた費用の90%に抑えられているので、州財政は黒字になる形で設計されている。
上の3州に加えて、ジョージア州、サウスカロライナ州、ネバダ州でも、2023年に学校選択制が州議会で採択される可能性が高くなっている。
フロリダの州下院議会では、州内の290万人の子供たち全てが学校選択を享受できるように法案を通したところで、州の上院議会で可決されれば法案が成立する予定だ。
米ケイトー研究所の教育自由センター所長のニール・マクラウスキー氏は、2021年だけでも、19の州が新しいプログラムを設立したり、既存のプログラムを拡張したりしていると指摘する。
教育も減量しては?
バイデン米政権は、学校に補助金をばら撒いて、左翼の牙城である教職員組合を味方につけ、票の獲得に結び付けたいとしている。だが国民が納税したお金が、イデオロギー教育を行う公教育に投じられて、被害を受けているのは、子供たちとその保護者たちである。
このため共和党系のみならず民主党の保護者たちも、学校選択制について支持する声が高まっている。2021年11月のバージニア州知事選で共和党候補者だったグレン・ヤンキン氏が、教育を争点にして選挙戦を闘ったことで、民主党の候補者を破ることができたのも、州民の間で学校教育への不満がたまっていることの証だった。
1800年代に公教育が生まれる以前は、親が支払う授業料によって賄われる私立の学校に子供たちは通っており、どの私学に通うかを選択する権利は親にあった。
資本主義の世界では、顧客を傷つけるようなサービスを提供する生産者は必ず淘汰される。保護者に選択の自由を取り戻す学校選択制は、自由主義体制の中にある「社会主義の出島」を滅ぼす力を持つのだ。
加えて「お上」が決める画一的な教育の行政指導をも一掃する。
納税者である保護者に還元し、彼らに自由に学校を選択してもらったほうが、教育に自由競争が生まれ、成果も上がる。教育省(日本の文科省)につぎ込んでも成果が上がらないなら、別の方法を試してみるべきだ。それによって、膨大な予算もカットできるようになるという利点もある。
アメリカでは全体の4分の1の州が何らかの形で、学校選択制の導入に向けて動き出している。肥大化する政府の減量にもなるこの制度。アメリカでの大きなうねりから、日本も学ぶことは多そうだ。
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