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《本記事のポイント》

  • トランプ米大統領は中国への制裁として、中国の大学院生と研究員の入国を禁止
  • 入国禁止の可能性がある大学は、中国軍の人材を輩出する事実上の「国防大学」!?
  • 日本の大学は、中国の国防大学との関係を深めているが……

トランプ米大統領が5月29日(現地時間)に記者会見を開き、「香港の自治」を侵害したとして、中国に対して実質的な制裁措置をとることを発表した。会見後にホワイトハウスは、民間の技術を活用して国防力を強化する「中国の軍民融合戦略」をサポートする一部の大学院生と博士号を持つ研究員の入国について、6月1日より禁止する声明を出している。

声明では、入国禁止される中国の大学名は明示されていない。ただ、米ボイス・オブ・アメリカ(5月29日付中国版)は、その可能性がある大学として、西北工業大学やハルビン工程大学、ハルビン工業大学、北京航空航天大学、北京理工大学、南京理工大学、南京航空航天大学を挙げていた。

オーストラリア戦略政策研究所が昨年発表した報告書によれば、それらの大学は「Seven Sons of National Defence (国防の七子)」と呼ばれ、卒業生の3割弱に相当する1万人以上の卒業生が、毎年防衛関係機関に就職。ハルビン工業大学に限っては、2018年の全研究予算の52%を防衛研究に費やしている。

高度な技術流出をめぐっては、日本の経済産業省の資料にも「フロリダ在住の中国人女性、Amin Yuは、中国のハルビン工業大学に勤務する教授等の指示により、平成14年から平成26年にかけて、海洋潜水艇用のシステム及び構成部材を中国に輸出」と明記されている。

つまり7つの大学は、中国軍と深い関係があり、軍の関連機関に人材を送り出す事実上の「国防大学」と言える。アメリカ政府が今回の制裁を発動するのも無理はないだろう。

日本の大学は、中国の「国防大学」との関係を深めているが……

アメリカの動きは、国際化を進める日本の大学と無関係ではない。

一例を挙げれば、先のハルビン工業大学と交流協定を結ぶ日本の大学は数多い。各大学ホームページをみれば、千葉工業大学や山形大学、京都大学、千葉大学、新潟大学、熊本大学、佐賀大学などが、交流の様子を紹介している。

米豪では、中国人留学生を介した技術流出が大きな問題となる中、日本の大学はそうした問題を"無視"するかのように、積極的に「国防大学」と交流している。もちろん、すべての交流が安全保障に関わっているわけではないが、人民解放軍と蜜月の関係にある大学であると理解した上でなされているのか疑問だ。

トランプ政権が打ち出したビザの取り消しは、中国人留学生の受け入れのあり方に一石を投じた。日本もそれを真剣に受け止め、教育における中国依存を脱却しなければならない。

(山本慧)

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