《記事のポイント》

  • 今年最初の首脳外交で意気込みを感じる。
  • これまでの外交には中身や成果がなかった。
  • 2017年は、時間や費用に見合った外交に期待する。

2017年の安倍晋三首相の首脳外交が始まった。

12日、フィリピンの首都マニラで、ドゥテルテ大統領と会談。政府開発援助(ODA)や民間投資を合わせて、今後5年間で1兆円規模の支援を行うと発表した。

昨年10月末にドゥテルテ氏が来日した際、安倍首相は、ドゥテルテ氏の地元ミンダナオ島の農業開発支援などに約50億円の円借款を表明するなどしたが、それと比べると、今回の支援の規模の大きさが分かる。

ここには、「フィリピンを中国になびかせず、民主主義国側につなぎ止めておく」という安倍政権の意志が感じられる。

日韓合意、トランプ氏、プーチン氏との会談、真珠湾慰霊

だが、近年の安倍政権の外交を振り返ると、事前のアナウンスの派手さの割に、中身や成果のないものが目立つ。

2015年末の慰安婦問題をめぐる日韓合意では、韓国政府が設立した元慰安婦を支援する財団に、日本政府が10億円を支払った。だが、韓国内で批判を浴び、合意した朴槿恵政権もいまや風前の灯火。合意が振り出しに戻るばかりか、「日本は慰安婦を強制連行した。性奴隷として扱った」という嘘の歴史が、世界の共通認識として広まっている。

2016年12月上旬には、世界の指導者で初めて、当選後のドナルド・トランプ次期米大統領と会談。しかし、その後の経済や貿易への対応を見る限り、安倍首相が、トランプ氏から効果的な何かを引き出したようには感じられない。

同年12月末の、ロシアのプーチン大統領の来日でも、北方領土の返還に固執したために、優先すべき平和条約の締結を進めることができなかった。

直後の、米ハワイ真珠湾における慰霊についても、どんな成果を得たのか分からない。当時の本欄でも指摘したが、首相官邸から近い靖国神社を参拝せずに、なぜ飛行機で7時間程度かかるハワイに慰霊できるのか理解に苦しむ。

かけた時間、費用、人に見合った成果を得ているのか

外遊では、各国の首脳と会談し、記者会見をして、どのような経済協力をするかなどを発表する。それがマスコミに報じられると、国民の目には、政治家が忙しく仕事をしているように映る。

だが、これまでの外交を見ていると、本当にそれにかけた時間、費用、人(マンパワー)に見合った成果を得ているのか疑問だ。メディアはこうした部分こそ厳しくチェックすべきだろう。

今回の外遊で安倍首相は、フィリピンに続いて、オーストラリア、インドネシア、ベトナムを訪問する。2017年、安倍首相には、日本に富や繁栄をもたらし、他国との共存共栄を図り、独裁国家の軍拡を押し止める、そうした中身のある外交を期待したい。

(山下格史)

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