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政府は、2017年4月の消費税率10%への増税と同時に、一部の品目に軽減税率を設ける方針を示している。
こうした中、自民党は1日、事業者が仕入れた商品ごとの税額などを記す「インボイス(税額票)」の導入を決めた。これにより、通常税率か軽減税率かを見分けられるようになる。今後の議論は、軽減税率を適用する品目や、その穴埋め財源に焦点が絞られるという。朝日新聞(2日付電子版)が報じた。
いつの間にか増税ありき
しかし、立ち止まって考えてほしい。
8%に引き上げた消費増税のダメージが今も尾を引き、消費増税をするか否かの議論が十分でないにもかかわらず、いつの間にか、増税を前提にした軽減税率の導入が政府内で決められている。
こうした政府の動きをチェックすべきは、マスコミであるはずだ。米ジャーナリストのウォルター・リップマンが「新聞は政府の、ではなく、民主主義の番犬だ」と言ったように、マスコミには、民主主義を守るために権力を監視する役割がある。
大手紙は軒並み、軽減税率を支持
だが、大手紙の軽減税率に関する論調を見れば、その役割を果たしているとは言えない。これは、最近の社説のタイトルを見るだけで一目瞭然だ。
「軽減税率 不正が横行しない制度設計に」(11月28日付読売新聞)
「軽減税率導入 社会保障を忘れるな」(10月16日付朝日新聞)
「軽減税率の議論で忘れてならないこと」(10月25日付日本経済新聞)
「消費税と軽減税率 『欧州型』で制度安定を」(10月29日付毎日新聞)
「軽減税率 『緩和』実感できる制度に」(10月26日付産経新聞)
いずれも、軽減税率は必要であり、増税もやむを得ないという前提に立っている。紙面には、「欧州の多くの国は『知識には課税しない』との原則で新聞・書籍も軽減税率の対象にしてきた。日本でも導入が望ましい」(毎日新聞)という、あからさまな政府への"談合交渉"まで書かれている。もはやマスコミは、増税ありきの「政府の番犬」ではないか。
マスコミが権力にすり寄れば、正しい情報が与えられない国民は判断を誤ってしまう。それは、「民主主義の死」に近づくことを意味する。国民は、政府が静かに進める消費増税や、マスコミの論調に目を光らせないといけない。(山本慧)
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