安倍晋三首相は24日の経済財政諮問会議で、最低賃金を毎年3%程度引き上げ、最終的には1000円にするよう求めた。アベノミクス「新・三本の矢」の一つである「GDP(国内総生産)600兆円」に向け、個人消費を増やすことが狙いだ。

安倍首相は、「名目GDPを2020年ごろに600兆円に増加させていくなかで、最低賃金も年率3%程度を目途として、引き上げていくことが必要で、全国平均が1000円となることを目指す」と述べた(24日付NHK NEWS web)。

現在の最低賃金の全国平均は、798円。2016年度に3%賃上げされると822円となり、毎年3%ずつ引き上げると2023年度に1000円になる計算だ。

あの手この手で投資や賃上げを迫る政府

加えて政府は、法人税の減税を行うつもりだ。菅義偉官房長官は同日、現在32.11%の法人税を、2016年に20%台に引き下げることを検討すると表明した。減税を通じて、企業の設備投資を促す狙いがある。

さらに自民党内では、企業の内部留保に課税する案が浮上。この案について、麻生太郎・財務相は否定的だが、20日の会見で「企業は給料を増やす、株主に配当を増やす、設備投資を増やす。この3つに利益は使われてしかるべき」「何の目的もなく貯めておいて、さらに(法人税を)減税してくださいって、何のためにするのか」(20日付産経新聞)と述べている。

賃上げで個人消費は活発にならない

だが、安倍政権の経済政策は矛盾している。賃上げを要求しつつ、2017年4月に消費税率を10%に上げようとしている。これでは個人消費は活発化しない。リストラが進んで非正規社員も増える可能性がある。また、安部首相の強制的な賃上げによって、企業が内部留保を取り崩していかざるを得なくなれば、他の先行投資が止まる可能性もある。

最悪の場合、賃上げで内部留保が減ったところに、不測の事態が起き、対応できず、赤字になって倒産する企業が続出すれば、大恐慌も起こり得る。「賃上げをすると、大恐慌が起きる」ということは、マルクス経済学の本でも指摘されていることだ。

政府が「賃上げ」や「会社の利益を設備投資に回せ」などと命令することは、政府が民間企業を支配する動きだ。いつから日本は「国家社会主義」「全体主義国家」になったのか。

そもそも企業がお金を貯め込んでいるのは、10%の消費増税後に、経済環境がどのように推移していくか見守ろうという不安の現われでもある。つまり、多くの国民や企業は、アベノミクスの行方、新・三本の矢の行方が不安で仕方がない。安倍政権は、その事実に謙虚であるべきだ。(泉)

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