2016年1月に始まるマイナンバー制度は、個人情報漏えいの危険性が高いことが指摘されている。弁護士や住民らのグループ計約150人が1日、マイナンバー制度は「憲法が保障するプライバシー権を侵害する」として、国を相手に利用停止や削除などを求める訴訟を、少なくとも全国5か所で一斉に起こした。マイナンバーの差し止めを求める訴訟は初めてだ。

プライバシーが漏れる危険

マイナンバーは、所得や社会保障などの情報を一つの番号で管理する制度で、10月から国民に順次番号通知がされ、来年1月から運用がスタートする。

今回の訴状によると、原告側は、2015年5月の日本年金機構へのサイバー攻撃による約125万件の個人情報流出を例に挙げ、官民ともに情報漏えいのリスクがあると指摘。さらに、個人番号カードの不正取得や偽造などによる「なりすまし」や詐欺の危険性も高いと主張した。こうしたリスクがあるにもかかわらず、安全対策は不十分で、「プライバシー権の侵害を我慢するほどの必要性は存在しない」と訴えている。

運用前から続出するマイナンバー被害

すでに、マイナンバーを巡るトラブルは全国で相次いでいる。

交付開始から間もない10月半ばには、厚生労働省の職員がIT関連業者に、マイナンバー制度導入に絡むシステム契約を受注できるよう便宜を図り、賄賂として現金を受け取ったとして逮捕された。同じころ、茨城県取手市が、住民票を発行する自動交付機の設定ミスで、誤ってマイナンバーを記載した住民票69世帯100人分を発行したと発表。結果として、マイナンバーの入った住民票が第三者に渡り、情報漏えいの危険性が高まった。

政府は個人情報の保護のためにさまざまな対策を講じているが、1月からの運用を待たずにこうした事態が起きているようでは、先が思いやられる。国民にここまでの負担と混乱を強いて、マイナンバーを導入する正当性はあるのか。

情報漏えいがもたらす国家レベルの危機

本誌1月号では、情報セキュリティの第一人者である山崎文明氏に、マイナンバーの漏えいの危険性について話を聞いている。インタビューの中で山崎氏は、「日本のマイナンバー制度はセキュリティの問題があまりに多く、制度設計が稚拙で、前近代的」「ひとたびマイナンバーが流出すれば、安全保障上も大問題になる。日本の知的財産を狙う外国の諜報活動に情報提供してしまうこともあり得る」とマイナンバー制度に伴うリスクを列挙した。(詳しくは、下記関連記事、2016年1月号記事「2016年 国民全員が標的! マイナンバーであなたの財産が奪われる」を参照ください)

財産権の否定は国家社会主義への道

今回訴訟を起こした弁護士らのグループが主張するように、これだけ個人情報漏えいや詐欺などのリスクが大きいマイナンバー制度を正当化することはできない。

そもそもマイナンバー制度の裏には「お金の流れや資産を全て把握したい」という財務省の考えがある。財務省が国民の資産の流れとストックを全てチェックできるようになれば、恣意的に課税できる状況を生む。それは財産権の否定、国民の経済的自由の制限につながり、ソ連やナチス・ドイツのような国家社会主義体制に近づいていく。マイナンバー制度は、プライバシー権の侵害よりもはるかに重大な危険をはらんでいる。(真)

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2015年10月24日付本欄 マイナンバーは北京警察の監視カメラと同じ

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2015年10月14日付本欄 早くもマイナンバー関連の詐欺事件 国民生活と仕事にも負担増

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2016年1月号記事 2016年 国民全員が標的! マイナンバーであなたの財産が奪われる

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