北京警察がこのほど、「市内の全ての道角にカメラを設置した」と発表したことを、英インターナショナル・ビジネス・タイムズ紙が報じている。

監視カメラは「犯罪防止」が名目

報道によると、中国は5億2800万元(約100億円)もの資金を投入して、「100%の監視率」を達成したという。

中国では、市内のあらゆる場所に推定38万7000台のカメラが設置されている。タクシーやバスの中にもカメラがある。

もちろん、中国政府は「国民の自由を奪うため」とは言わない。目的は、「犯罪の抑止や解決」だという。

実際、この監視システムで、今年に入ってから1500件もの犯罪が解決されており、2014年に比べて22%も検挙率が上がっている。

しかし、記事によると、北京市民の多くは犯罪の減少よりも、監視システムが国民をコントロールするために使われることを懸念しているという。

逃げ場がない「大きな政府」が治める国

ジョージ・オーウェルの著書「1984年」では、個人の家の中にまで監視カメラがあった。北京の監視システムは、こういった「究極の大きな政府」に一歩近づいたと言えるのではないだろうか。

監視社会の怖いところは、国民に逃げ場がないことだ。

もちろん「悪いことをしなければ恐れるものはない」という人もいるだろう。しかし、監視社会では、些細なことを盾に、政府が国民を追い詰めることができる。

たとえば、国の方針に抗議するためにデモを行った人物に対して、警察が、「あなたが5年前に車でスピード違反しているところがカメラに映っていました」などと、デモと関係がないことで圧力をかけることができる。

マイナンバー制が国民の自由を奪う

日本のマイナンバー制度も、北京警察の監視カメラに似ている。

「効率化などを通して、行政サービスをより良くする」「脱税を防ぐ」ことを目的として導入された。

しかし、これも国民を従わせるための装置として使用することができる。

政府にとって都合の悪い人物に対して、やましいお金の使い方をしていないかを調べて、「あなたは先月、銀行口座から10万円おろしましたが、何か突然大金が必要になることでもあったのですか?」などと、圧力をかけることができる。

政府が必ずしも良心的に運営されるとは限らない。個々人の自由を最大現に生かす社会こそが望ましい。(中原一隆)

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