国連で軍縮・安全保障を扱う第一委員会は、日本が提出した核兵器廃絶決議案を156カ国の賛成多数で採択した。

だが、昨年まで共同提案国だったアメリカ、イギリスに加え、昨年は賛成したフランスなどが一転して棄権した。また、核保有国である中国・北朝鮮・ロシアの3カ国は決議案に反対した。

今回日本が主導した決議案には被爆地への訪問を世界の指導者らに促す内容も盛り込まれたが、これに反対する中国は、原爆は「日本が仕掛けた侵略戦争の直接の結果だ」と、被爆地への訪問と関連のない歴史問題を持ち出して非難した。

同盟国アメリカの棄権の背景には、決議案が「核の非人道性」を強調する内容を含んでいたことがあるとみられている。

アメリカの人々の原爆投下への認識は、どのようなものか。英調査会社ユーガブが、2015年7月にアメリカ人1000人を対象に、広島・長崎への原爆投下の是非を調査した。結果は、原爆投下を「正しかった」と回答した人は全体の45%で、「間違っていた」と回答した29%を依然として上回っていた。

終戦直後と比べると、原爆投下を肯定する意見は少なくなっているが、今も約半数が支持しているという結果だ。世界で唯一の被爆国として、日本は原爆投下の間違いについて世界に発信することが求められている。

日本が抑止力を持ち、悪を犯させないことも必要

だが、核廃絶に向けての動きは、現実的なステップを踏むべきだ。ゆくゆくは地球規模で核廃絶を目指すことが必要であるが、今回中国、北朝鮮、ロシアが反対したことからも分かるように、核保有国は自国防衛を理由に、核を簡単には手放さない。

そもそも、アメリカのような自由主義圏の持つ核と、中国・北朝鮮などの社会主義圏の持つ核は意味合いが異なる。自由主義圏では核兵器の使用について国民や国際世論のチェック機能が働くが、中国や北朝鮮などの社会主義国では、独裁者の一存で核兵器が使われる恐れもある。日本は、そうした社会主義の核保有国に囲まれ、安全保障上、極めて危険な状態に置かれている。

核武装の問題を考えるときに、日本が正当な軍事力を持つことは「戦争を始めること」とは真逆であり、むしろ核兵器を脅しの材料に使おうとする侵略国に、悪を犯すきっかけを与えない「抑止力」になるという考え方も必要なのではないか。 (真)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『原爆投下は人類への罪か? 公開霊言 トルーマン&F・ルーズベルトの新証言』大川隆法著

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