戦前・戦中生まれの人口が減り、戦争体験を語り継ぐ人物がいなくなっていく現状に対して、厚生労働省が、戦争体験の「伝承者」の育成事業を始める方針を固めた。伝承者は3年かけて体験者が見た光景や感じたことなどを聞き、学校現場などで語り継ぐ役割を担う。読売新聞が報じた。

戦争体験が風化しつつある中、実感を持って語り継げる人は貴重な人材であるのは確かだ。特に、世界で唯一の被爆国である日本は、核兵器が広がりつつある世界に、その体験によって警鐘を鳴らし続ける責務もあるといえよう。

だが、そうした体験が歪められた形で伝わるなら問題がある。

被爆の「語り部」の政治的主張を中学校長が制止

2014年7月、長崎県内の中学校に79歳の被爆者の男性が「語り部」として招かれたが、途中から戦時中の日本軍が中国や韓国の人たちに残虐な行為をしたとする明確な根拠のない話をし始めた。さらには原発反対といった、被爆体験とは関係のない政治的な主張も行ったため、校長が話を制止したという。

今年の7月末にこの件が毎日新聞等で報じられ、語り部の男性は記者会見を開いた。

産経新聞によれば、語り部の男性は中国や韓国にある遺骨館や歴史館などで展示されていた写真などを示して語ったという。

自らが体験した話なら別だが、全て伝聞に過ぎない。しかもそれは、「日本が悪かった」とする歴史のねつ造を続ける中国や韓国の主張だ。真偽のはっきりしない内容を一方的に話すことは、真理の探究を行うべき教育現場にふさわしくないばかりか、子供たちに「日本が悪かったから原爆を落とされた」という誤った印象を与えかねない。話を制止した校長の判断は、教育者として当然といえる。

真偽の不確かな主張を語り継ぐことはやめるべき

純粋に真実を伝えることによって子供たちは戦争の悲惨さを知り、戦争を二度と起こさないための知識を正しく学びたいという意欲が出てくる。

マスコミが報じない「真実」を伝えるネット・オピニオン番組「THE FACT(ザ・ファクト)」は、「【人類に対する罪】原爆投下――アメリカの責任」と題し、広島の被爆者たちの体験や歴史学者へのインタビューを紹介しつつ、原爆投下の是非を問うている。この番組は、YouTubeチャンネルで観ることができる。

https://www.youtube.com/watch?v=9BiFX93LVTQ&spfreload=10

被爆者たちの話は、原爆の激しい衝撃、瓦礫の下敷きになった母を捨てて逃げたこと、苦しむ人の呻き声など、体験者しか語れない貴重なものだ。彼らは二度と核兵器が使われないよう願い、思い出したくない辛く悲しい体験を語っている。

こうした「語り部」たちの純粋で真摯な思いを汚さないためにも、真偽の不確かな主張を語り継ぐことはやめてもらいたいものだ。(佳)

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