習近平主席"ソフト・クーデター"で権力喪失? の内幕【澁谷司──中国包囲網の現在地】
2024.11.02
アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師
澁谷 司
(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。
日本のマスメディアはほとんど取り上げようとしないが、すでに習近平主席は政治的権力の一部と軍権を喪失していると言っても過言ではない。
習主席は、勢力を伸ばしつつある反習派を排除しようとしたが失敗し、いっそう、権力基盤の弱体化を招いた公算が大きいのだ。
反習派の急先鋒の筆頭には、中国軍制服組トップの張又侠(ちょう・ゆうきょう)・中央軍事委員会副主席、そして、もともと習主席の子飼いだったが昨今、反旗を翻している苗華(びょう・か)・中央軍事委員会政治工作部主任などがいる。
習主席は7月中旬の「3中全会」を機に、彼らを追放したいと考えていたふしがある。
その目論見の一つの鍵となったのは、「中央軍事委員会幹部評価委員会」という機関である。これは2016年の「軍改革」時に習主席が設置した"謎の組織"である。目的は、当時の総政治部(その後、政治工作部と改称)から人事権を奪い、掌握することだった。
習主席は以前から、この組織に彭麗媛夫人や軍幹部の何宏軍(か・こうぐん)といった、習派の人物を密かに登用したようである。
さらに習主席は2024年7月9日、何宏軍を中央軍事委員会政治工作部「常務」副主任とし、上将に昇進させた。「常務」というのは今まで存在しなかった役職であるが、これは近いうち、軍委政治工作部主任である苗華に取って代わらせることを意味していた。米国の政治評論家・陳破空氏によれば、習主席の狙いは、何宏軍を強大な権力を持つ苗華の後任にさせることだったという。
習主席は何とか張又侠と苗華を追放しようとしていた。代わって何宏軍を押し上げ、彭麗媛夫人も何か謎の人事を行って習派陣営の主要メンバーに加え、国防相で習派の董軍を中央軍事委員会メンバーへ昇格させる予定だったのだろう。
しかし「3中全会」の最中、習主席が脳卒中で倒れた。そこで、張又侠が機先を制し、「ソフト・クーデター」を起こしたと考えられる。この事件によって習主席の策略は失敗に終わったという(*1)。
(*1)2024年10月11日付『中国瞭望』
軍内で一気に求心力を失っている習主席
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