澁谷 司

アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

6月13日、中国共産党は北京の人民大会堂でトウ小平時代の「保守派」の実力者、陳雲(ちん・うん)生誕120周年記念シンポジウムを開催した(*1)。習近平主席は他の常務委員6人と出席し、演説を行った。

共産党としては、いくら党内で火花を散らし合っても、対外的には団結を示さねばならない。換言すれば、党は"仮面"をかぶり続ける必要がある。

CCTVの映像によれば、演壇には7人の政治局常務委員だけでなく、張又侠(ちょう・ゆうきょう)ら6人が座っていた。

演壇の最前列には胡春華、王小洪(おう・しょうこう)ら新旧の政治家たちが着席していた。他方、陳雲の子供たち、陳元(ちん・げん)らもそれぞれ座談会に出席したが、劉源(りゅう・げん)等の「紅二代」(党を創設した元老たちの子女)も参列した。

(*1)2025年6月14日付『中国瞭望』

独裁・血族体制を生んだ4つの遺訓

さて、中国共産党の今日の権力継承モデルは、陳雲が主導したものだろう。陳雲路線では、中国共産党の家族政治と血統論が維持されている。

陳雲は次の4つの「遺訓」を残している。

(1)中国人は管理しやすく、飢えても反乱は起こさない。

(2)党内闘争で殺戮を始めてはいけない。さもなければ我々の子孫が顔を合わせづらくなる。

(3)権力は我々の子供(「紅二代」)に移譲しなければならない。そうでないと将来、祖先の墓を掘り返されることになる。

(4)「新聞法」は施行してはいけない。蒋介石はそれで失敗した。共産党がニュースを管理するのが良い。

陳雲の「4つの遺訓」は、民主主義を拒否し、独裁体制を維持するための中国共産党の金科玉条となり、共産党による権力の私物化と「幇」(ギャング集団)の土台を築いた。

陳雲は「我々の子供たちは自分の祖先の墓を掘り返すようなことはしない」と言った。また、「我々が新しい国を建国したのだから、それを継承するのは我々の子孫であるべきだ」とも語っている。これでは、まるで北朝鮮の権力継承と同じになるのではないだろうか。

この陳雲の「保守的」動議はトウ小平によって承認されたという。つまり、習主席の総書記即位は、ある意味、陳雲からの"贈り物"であると言っても過言ではない。

党の「軍」私物化を否定し、民主化を訴えた劉源

一方、最近、評論家の老灯(ろう・とう)は、劉少奇の息子である劉源が5月に開かれた拡大政治局会議に出席し、スピーチを行ったとセルフメディアで報じた(*2)。

(*2)2025年6月12日付『万維読者網』