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昭和の生き方に学ぶシリーズ第2弾として、前回の『姿三四郎』に続き、日本映画史上の名作とされる『二十四の瞳』(昭和29年)をご紹介します。一口に昭和といっても、昭和一ケタ年代からバブル経済に沸いた昭和60年代まで長く変化に富んでいますが、本作が描くのは戦前から終戦後の昭和21年(1946年)に到る激動の時代です。

(あらすじ)

昭和3年、瀬戸内海・小豆島の分教場に若い新米教師の大石久子(高峰秀子)が赴任する。彼女は受け持った小学1年生12人に慕われるも半年で本校に転任となる。4年後、5年生となり本校に通うようになった彼らと大石先生は再会するが、彼らが卒業した年、彼女は軍国主義の影響が強まる学校が嫌になり教師を辞める。終戦の翌年、教職に戻った彼女は懐かしい分教場に赴任。今や24、5歳となった初めての教え子たちが歓迎会を開いてくれるが──。

令和の時代を生きる私たちが、70年以上前の本作を観る際の大きな興味は、この国から失われつつある──あるいはほとんど失われてしまった──「昭和初期の日本の美質」を目にすることができる点です。

まず、12人の1年生の「二十四の瞳」。初めて教室で出席をとられる子供たちが「はい」と返事をする場面で、一人ひとりの顔がアップで映ります。年配の方はこれを見て、「ああ、昔の日本の子供はこういう顔をしていた」と感慨を覚えるのではないでしょうか。彼らの瞳には、はっとするほど純朴な、原石のような光が宿っており、物質と情報が溢れる現代の子供たちとはどこか違う気がします。

本作には1年生12人と、彼らが5年生になった姿が出てきます。それを自然に見せるため、制作陣は全国の3600組7200人の、よく似た兄弟姉妹のなかから12組を選び、下の子に1年生、上の子に5年生を演じさせたのです。現代では考えられない手間の掛け方であり、そこにいるのは紛れもない普通の「昭和の子供」たちです。

次に、いわゆる文部省唱歌の多用。「仰げば尊し」「あわて床屋」など、今ではほとんど歌われなくなった唱歌を歌いながら子供たちが野中や海辺の道をゆく様は、現代の車の多いアスファルトの通学路に比べ、まるで天上界にあるユートピアの原風景のようです。

そして、本作に見られる昭和的美徳を一つ。大石先生は、本校に通う高学年の男子から憎まれ口を叩かれたことを、自分と二人暮らしの母親に愚痴ります。また、残暑の暑い日に家を出るのが気が重くなります。そのたびに母親は笑いながら言います。

「しんぼう、しんぼう。もうちょっとのしんぼう」

この「しんぼう(辛抱)」という日本語、めっきり耳にしなくなったと思いませんか。言葉が使われなくなるのは、その言葉の表す内容が世の中で廃(すた)れたことの表れです。大川隆法・幸福の科学総裁は著書『女性らしさの成功社会学』のなかで、こう述べています。

『忍耐』ということも大事です。昔、女性が厳しい躾(しつけ)を受ける場合には、辛抱ということを習ったわけですが、今は、その辛抱がない時代に入ってきています

大人の大石先生だけではありません。松江という少女は5年生の初め、友達と同じ弁当箱を親にねだります。母親は買ってやると約束しますが、家にそんな金はないのです。直後に母親はお産で亡くなり、松江は赤ん坊と弟妹二人の世話をするため学校に来なくなります。大石先生は弁当箱を買って松江を訪ねますが、彼女はその後どこかに奉公に出されます。翌年、修学旅行で高松の港町に来た先生が、飲食店の中から聞き覚えのある声がするので覗いてみると、店員として働く松江の姿がありました。

家が貧しく、ほしい物を買ってもらえない寂しさ。母が死に、学校に行けなくなった悲しさ。11歳で奉公に出るつらさ──。昭和期の日本人の多くは、松江のように様々なつらさに耐えて生き抜いてきました。辛抱という言葉は心法(しんぼう)という、心の修練を意味する仏教用語が、「辛さを抱えて忍耐する」意味に変わったのだそうです。生活は豊かで楽に越したことはありませんが、辛抱が私たちの心を練り、人格を鍛えてくれるのも事実であり、現代では見失われがちなそんな美徳をこの映画は思い出させてくれます。辛抱を重ねた松江のその後は映画をご覧ください。

最後に、本作の脚本には、戦争で人が死ぬことの残酷さや、軍国主義への怒り、恨みも一部、出てきます。仏法真理的には、正義や自衛のための戦いや、永遠の生命を知った上で神仏の正しさのため命を投げ出すことは、決して単なる悪ではありません。されど実際に戦禍を生きた日本人の多くは、戦後の「戦争イコール悪」の風潮の影響もあって、脚本の反戦的な面にも共感したらしく、本作は昭和29年最大のヒット作となりました。そんな歴史を踏まえ、若い世代が昭和の日本を知るための一本としてもお勧めします。

(田中 司)

 

『二十四の瞳』

【スタッフ】
監督・脚本:木下惠介 原作:壷井栄
【キャスト】
出演:高峰秀子 笠智衆 田村高廣ほか
【その他】
1954年 | 松竹 | 156分

 

【関連書籍】

女性らしさの成功社会学

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