全国公開中

《本記事のポイント》

  • 深い地獄に落ちたフセイン大統領
  • 道連れで地獄へ行く民衆たち
  • 地獄に落ちないための与える愛

1990年代のイラク。国民が戦争と食糧不足に苦しむなか、フセイン大統領は自身の誕生日を祝うケーキをつくるよう、国内の各学校に命じていた。

祖母と2人で暮らす9歳の少女ラミアは、小学校で行われたくじ引きで"名誉ある"ケーキ係に選ばれてしまう。ケーキを用意できなければ、重い罰が待っているという。翌朝、ラミアは祖母に連れられ、父の形見の時計と、彼女にとって友だちの雄鶏ヒンディと一緒に町へ出かける。しかし、日々の食材すら満足にそろえられない祖母の目的はケーキではなく、ラミアを養子に出すことだった。

とっさに逃げ出したラミアは、自らの手でケーキの材料を集めれば祖母との暮らしを続けられると信じ、クラスメイトのサイードと協力して町を駆け巡るが……。独裁政権下のイラクを舞台に、小学校で大統領の誕生日ケーキをつくる係に任命された少女の悲しい運命が、美しい南イラクの湿地帯を舞台に描かれる。

イラク出身のハサン・ハーディが自らの体験をもとに長編初監督・脚本を手がけ、2025年第78回カンヌ国際映画祭にて、監督週間観客賞とカメラドール(新人監督賞)を受賞。

深い地獄に落ちたフセイン大統領

この映画で描かれているのは、かつてのイラク独裁者サダム・フセインが、巧妙なプロパガンダと恐怖で国民を支配していた実態である。

フセインは秘密警察による監視網を張り巡らせ、国民に密告を奨励することで、批判者を即座に排除する体制を整えていたという。その監視の目は、小学校の教室に及び、大統領誕生日のためのケーキ作りも、その一環であったのだ。

教室の中にまで掲げられた自身の肖像は、人々に「常に監視されている」という感覚を植え付け、本作に登場する「魂と血をサダムに捧げます」といった独特のかけ声も、彼が編み出した統治のテクニックの一環だったのだという。

サダム・フセインが処刑されて、今年でちょうど20年目を迎えるが、大川隆法・幸福の科学総裁は、フセインが死後、地獄に赴いていることを霊査によって明かしている。

ヒットラーとスターリンが地獄で、ピストルで決闘した。弾丸を発射した後、二人とも、さらに深い井戸の底に落ちた。近所には、サダム・フセイン用の井戸がもう掘られていた」(『地獄に堕ちないための言葉』)

この井戸は、危険犯をその底に隔離するためのもので、無間地獄だと言われている。

無間地獄では、他の人の姿も見えず、声も聞けない。いわゆる『危険犯』として井戸の底に隔離されるのだ。残虐な政治家、間違った思想を流布した者、生前、悪魔信仰の指導者をしていた者たちである」(前掲書)

生前、神のごとく崇拝されたサダム・フセイン体制は26年間続いた後、2003年、米軍の3週間の攻撃によって、あっけなく崩壊した。しかし、恐怖による支配を目指したその体制が人々の心に残した爪跡はいまだに生々しく、痛みと疼きを呼び起こすのだろう。それが、この映画制作の動機にもなっているのだと思われる。

道連れで地獄へ行く民衆たち

この映画の秀逸な点は、独裁者に支配された恐怖の体制のもとで、人々が心を蝕まれ、善と悪の境目を見失っていく姿を、リアルに描き切っているところにある。

主人公のラミアも例外ではなく、ケーキを持っていかずに処罰され、人生の破滅と追い込まれることへの恐怖から窃盗に手を染め、わずか9歳でありながら、精神的な地獄をさまようのだ。

独裁政治のもとで生きる民衆が、死後、ゾンビやイナゴの大群となって、将軍や国王一家を襲う姿を、大川隆法総裁は次のように霊査している。

ある時、餓鬼霊の群れに出くわした。戦争ばかりやって、民衆を飢えさせた将軍が、ゾンビの大軍に食いちらかされているようだった

ある時、大群のイナゴに姿を変えた飢えた民衆が、国王一家に襲いかかり、彼らを、白骨に変えていくところを見た」(前掲書より)

独裁政権のもとで自由を奪われていた無力な民衆から、逆襲を受けるという因果応報が展開するのだ。

地獄に落ちないための与える愛

この映画の救いは、窮地に陥ったラミアを救うべく、行きずりの郵便配達員が、八方手を尽くして立ち回り、徹底的な善意を発揮するところである。またラミアのクラスメイトのサイードとその母親も、なけなしの食料を差し出して、ラミアのケーキ作りを完成させる。

たとえその国が地獄的な様相を呈していたとしても、人々の心のなかに、神への愛と隣人への無償の奉仕の心が宿っているときに、そこには天国と通じる道が開かれているということだろう。

実在世界の法則は、与える者は与えられ、奪う者は奪われるということである。

だから、与える愛で損をする者はなく、他人を騙して、奪って得をする者はないのである。」(前掲書)

アフワルと呼ばれる緑豊かな南イラクの湿地帯を舞台に繰り広げられる、独裁の恐怖と人々の心の苦しみを描いた本作品は、北朝鮮や中国など、いまだに残る東アジアの独裁主義体制の下に生きる人々の幸せのためにも、その恐怖政治に一刻も早く終止符を打つべきことを痛感させて止まない。

 

『大統領のケーキ』

【公開日】
全国公開中
【スタッフ】
監督:ハサン・ハーディ
【配給等】
配給:松竹
【その他】
2025年製作 | 105分 | イラク・アメリカ・カタール合作

【関連書籍】

地獄に堕ちないための言葉

『地獄に堕ちないための言葉』

大川隆法著 幸福の科学出版

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