香港区議会選挙、民主派圧勝がもたらす3つの影響 【澁谷司──中国包囲網の現在地】
2019.11.27
写真:TAM pak to / Shutterstock.com
《本記事のポイント》
- 香港区議選で民主派が圧勝
- 民主派圧勝が及ぼす3つの影響
- 焦る中国共産党
香港の行方を占うという意味で注目されていた香港区議会選挙。「民主派」が、約390議席の獲得という地滑り的な大勝を収め、無投票選出議員らを除き81%の議席を確保した。
今回の選挙は、さながら「住民投票」の様相を帯びていた。
区議会選挙の有権者(7年以上香港に住む18歳以上)数は約413.3万人で、前回と比べて43.9万人も増加。そのうち投票者数は約294.4万人で、投票率が71.2%という驚異的な数字となった。前回時(2015年)より24.2ポイントも上昇している。
民主派圧勝が及ぼす3つの影響
さて、この選挙結果を受けて、今後、何が変わるのだろうか。
第1に、各区の議会で、「民主派色」が一気に強まる。香港は18区域(港島4区、九龍5区、新界9区)に分かれているが、民主派は17区域の議会で過半数を獲得した。そのため、議会の正副議長は民主派から選出される。
第2に、行政長官選出への影響が予想される。1200人の「選挙委員会」が行政長官を選出している。そのうち117人は区議会議員が担う。その区議会議員はこれまで「親中派」が占めていた。しかし今後は民主派が占めるようになる。
さらに「選挙委員会」全体を見ても、民主派は325人存在した。そこに、今回当選した民主派の議員117人が加われば、全体の3分の1以上が民主派で占められることになる。当然、選挙委員会も多少なりとも変わる公算がある。
第3に、立法会への影響もある。立法会では、区議会議員に1議席が与えられている(他の区議会議員枠の5議席は選挙で選出)。その議席は親中派に割り与えられていたが、これからは民主派となる。立法会は計70議席と少ないので、この1議席が持つウエイトは決して小さくないだろう。
焦る中国共産党
こうした流れに対して、来日している中国の王毅外相は「香港が中国の一部であるという事実は不変だ。香港を混乱させる試みも、香港の繁栄と安定を損なうたくらみも、すべて成功することはない」と、香港の民主派や米国をはじめとする国際社会をけん制した。
中国共産党の"本音"としては心中穏やかではなく、予定通り区議会選挙が実施されてしまったことに、地団駄を踏んでいるに違いない。香港市民の民意は、明らかに行政長官や立法会での「民主的選挙」の導入にあることが示唆されてしまったのだ。
しかしそもそも、2047年には香港の「一国二制度」が終わることになっていた。中国共産党はそれほど焦る必要はなかったはずだ。
それにもかかわらず、習近平政権が慌てて一国二制度を「一国一制度」に変えようとしている。ひょっとして習政権自体が終焉に近づいているからではないだろうか。
拓殖大学海外事情研究所
澁谷 司
(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~2005年夏にかけて台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011年4月~2014年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界新書)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。
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