イギリスのEU離脱は愚かなのか──もし日本がアジア版EUに入ったら!?
2019.01.23
《本記事のポイント》
- 「国会」が北京にある!?
- 北朝鮮難民が東京でテロ
- 「アベノミクス」なんて許されない
EU離脱の手続きをめぐり、イギリスが揺れている。「離脱の仕方によっては、欧州のみならず世界の経済に混乱をもたらす」と警戒感は強い。
それに伴い、離脱を判断したイギリスに対しても、「ポピュリズムだ」「民族主義だ」「理性的ではない」といった批判が高まる。「国境をなくす」という"理想"が行き詰まった「残念感」も、その根底にはある。
では、もし日本が「アジア版EU」なるものに加盟したら? 「自分たちごと」に置き換えてみれば、今回の離脱の判断が単なるナショナリズムでないことが見えてくる。
自由主義圏でつくるEUとは違って、日本が独裁国家の中国や北朝鮮と現状の体制のままで組むことは非現実的だが、「頭の体操」としてご覧いただきたい。
◆ ◆ ◆
日本が加盟する「アジア連合(AU)」
日本が今、「アジア連合」、通称「AU(エーユー)」に加盟していると想像してみてほしい。AUには、中国、韓国、日本、台湾、フィリピン、タイ、インドネシアなど、アジア諸国が加盟している。
AUは、こんな理想のもと、設立された。
「アジアの国々が、あたかも一つの国のようになれば、争いもなくなる。そして、国境を越えた物流やビジネスが、域内の繁栄をもたらす」
一つの国のようになる――。これがどういうことかというと、「アジアで共通した政策や法律」ができるということだ。
例えばAUは20XX年、北朝鮮で紛争が起きた際、「難民を皆で受け入れよう」という判断をした。
AUの本部は北京!?
具体的には誰が決めたのか? 「アジアの皆」だ。その政策を決める「霞が関」にあたる場所は、中国の北京に置かれている(EUの「本部」はベルギーのブリュッセルにある)。
「国会」に相当するのは、アジア中から選ばれた700人を超える議員が集う「アジア議会」(EUの議会議事堂はフランスやベルギーにある)。
そして、実質的な影響力を持つ「内閣」に相当するのは、「アジア理事会」だ(EUの「理事会」はベルギーにある)。アジア理事会のメンバーは、各国の力関係で選ばれ、そのトップを努める議長(通称、大統領)は、中国人だ。
そうした機関の決定により、日本も事実上、「難民受け入れ」に応じなければならなくなった。どういうことか。
実はAU内には、「難民・移民は、ある国で入国審査をクリアすれば、他の加盟国にも自由に入れる」という協定ができた。そのため多くの難民は、まず審査の緩い韓国で難民申請をする。それが認められたら、生活がしやすい日本に渡ってくる。日本はそれを拒めないのだ。
さらに北京にあるAU理事会は、「人権を守る」などと言って、各国に難民受け入れを割り当てるなどしてきた(EUも同様の協定等で、シリア難民などを受け入れている)。
北朝鮮難民が東京でテロ!?
しかしこれは日本の治安を一気に悪化させた。
日本では、街中のいたるところで北朝鮮人を見かけるようになった。
しかし、日本語の読み書きもできず、基本的な計算も身につけていない人が、きちんとした職にありつけるはずがない。彼らは事実上のホームレスのようになり、東京や大阪の一部にスラムを形成した。生活費を稼ぐために、窃盗や強盗なども働くようになった。
さらに怖いのが、テロだ。「金王朝」を信奉し、「日帝」への恨みを持つ者が、難民に紛れ込んで日本に入国しやすくなっている。こうした人々が、地下鉄やバスで爆発を起こす「東京同時爆破事件」や、金王朝の風刺画を掲載した雑誌編集社で銃を乱射するといったテロを起こした。
日本ではAUへの疑問が高まっていた(イギリスのEU離脱の一因は、"難民押し付け"への不満)。
キュウリの形まで"中国流"の規制
日本にとって同じくらい我慢ならなかったのは、AUの規制の多さだ。
実は、日本の法律の6割が、北京にあるAU本部で決められたもの。『六法全書』は、『七法全書』に変わり、6つ目の「AU法」が、ページの半分以上を占める。
例えば、曲がったキュウリや、形の悪いニンジン、サイズの小さなメロンなどを、販売することができない。バナナの1房あたりの本数は最低4本と決められた。農家はその形を揃えるために、膨大な研究コストを費やし、規格外の農作物は毎年大量に捨てざるを得ない。
また、加盟国は漁獲量の管理・規制も受けている。そのため、港町では生活に必要な漁業ができず、廃業を余儀なくされたところも多い。
他にも「8歳未満の子供が風船を膨らませるときは、大人が監督しなければならない」といった、不思議な規制も生まれた。
AUのリーダーシップを取っている中国では、共産党があらゆることに規制をかけて国民を縛っている。しかし、そのカルチャーを日本に持ちこまれることで、人々の不満は募っていった(EUには、実際に上記のような規制が存在している)。
「分担金」が弱小国にまかれる
日本にとっては、不公平な「分担金」も我慢ならない問題だ。
「アジア連合(AU)」も、"アジア全体のため"の公共事業などを行う。その財政を支えているのは、各国から払われる分担金だ。分担金は、国の豊かさに応じた額を払わなければならない。経済大国の日本も、多額の「血税」を納めてきた。
しかし、その予算の多くは、貧乏な国に吸い取られてしまう。例えばタイやフィリピンの高速道路は、日本が出したお金でつくられたようなものだ。
この分担金を"狙って"、AUには数多くの発展途上国が参加してきた。「アジアの平和と統合」を掛け声に……。
現実は、日本が「弱者連合」の中で"たかられている"だけなのは、誰の目にも明らかだった。
「アベノミクス」なんてAUでは許されない
さらにAUには、共通通貨である「オーロ(AURO)」がある。
日本は円を捨て、中国は人民元を捨て、韓国はウォンを捨て、フィリピンはフィリピンドルを捨て、統一通貨オーロを採用した(EUの中でも、イギリスは「ユーロ」を採用しなかったので、この想定はフランスやドイツの立場の話となる)。
まず、日本銀行は重大な政策を決める権限を失う。代わりに北京に、「アジア中央銀行(ACB)」がオーロを発行し、域内全ての金融政策を担う(ユーロをつかさどる「欧州中央銀行」はドイツにある)。
ある時、日本が不況に陥り、街に失業者が溢れたことがあった。しかし、「アベノミクス第一の矢」のような金融緩和はできなかった。
あくまで金融政策は、アジア中央銀行(ACB)がアジア全体の景気を見て判断する。日本はデフレでも、中国はインフレかもしれない。「日本の都合ばかり考えるわけにはいかない」と言われてしまった。
韓国の財政破綻も"連帯責任"!?
さらに通貨が一緒だと、「各国が、自国通貨の信用を守るために、財政赤字を減らそうとする」というモチベーションが働かない。「連帯責任は、無責任」というものだ。
そして近年、韓国が巨額の債務を隠していることが発覚した。韓国は、「中国や日本がしっかりしているから、わが国の借金が膨らんでも、オーロの信用は大丈夫だろう」とたかをくくっていたようだ。公務員は給料を吊り上げ、政治家は手厚い社会保障を提供して、票集めをしていた。財政規律は緩みきっていた。
オーロの信用が下がり、オーロの価値が急激に下がった。オーロ建ての株などの資産も、ドル換算で大きく目減りした。多くの日本人や銀行が、大損害を受けた(これがいわゆるEUで起きた「ギリシャ危機」)。
さらに、このまま韓国が財政破綻すれば、オーロはさらに暴落する……。最悪の事態を防ぐため、なぜか日本は韓国に財政支援をすることになった。
「なぜ自分たちの足を引っ張った韓国に、さらに私たちの血税を注がなきゃいけないのか」と、日本人が怒らないはずがなかった。
AUは「国家版の共産主義」だった
日本がAUに入ったことによる弊害の一つは「自由を失ったこと」だ。「難民を受け入れるかどうかを決める」「自国にあわせた規制をつくる」「自国にあわせた金融政策を行う」という自由を失った。
もう一つの弊害は、「弱小国にたかられる」ということ。分担金も吸い取られ、通貨の信用についても寄りかかられている状態となった。
自由を失い、強者がたかられるAUは、国際版共産主義と言っても過言ではない。
大企業や金融機関はAUを歓迎
しかし、なぜ日本はこんな不自由で理不尽なAUに加盟したのだろうか。
AU内では、関税もなく、人も自由に移動できる。通貨も一緒だ。そのため、例えば、トヨタをはじめとする輸出企業は、アジア全域に「関税なし」「円高の心配なし」でビジネスを展開できる。三菱東京UFJ銀行などの金融機関も、アジアのどこでも自由にビジネスができる。
そのため、経団連は「ナショナリズムと保護主義で、アジアを分断するべきではない」と、AUからの離脱に反対している。
しかし、日本は最終的に「一部の業界の利益よりも、自由や主権という、もっと大事なものを取ろう。"独立"して、自助努力の道に入ろう」と考え、このほど、AU離脱を決めたのだった――。
◆ ◆ ◆
これが、イギリスがEU離脱に至った不満を、日本に置き換えたものだ。もちろんEUにもメリットはあっただろうし、そこには高尚な理想があっただろう。しかし、こうした現実を考えたときに、簡単にイギリスを責めることができるだろうか……。
(ザ・リバティWeb企画部 2017年公開の有料記事を修正)
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2018年12月号 「メルケル後」のドイツとEUの未来 ─ナチスの過去と決別する方法 - 編集長コラム
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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