日本政府の「南京」意見書が記憶遺産登録に逆効果!? 毎日新聞の見解を問う
2015.11.07
南京大虐殺記念館の館内
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に登録された「南京大虐殺文書」について、この最終審議の直前である9月末に、日本政府はユネスコに対し、「南京大虐殺」を否定する髙橋史朗・明星大学教授が作成した意見書を提出していた。この意見書をめぐって、日本人学者から「意見書により、かえって日本の印象を悪くして逆効果になった恐れがある」という懸念の声が上がっているという。毎日新聞(6日付)が報じた。
髙橋氏は、「南京大虐殺」を否定する有力な学者の一人として知られる。同氏は、ユネスコに提出した意見書の中で、「(中国が申請した資料の)内容の真正性について判断することができない」と中国の申請に反論。
具体的な反論の一つに、戦後、大虐殺の首謀者として死刑になった谷寿夫中将の裁判に触れ、「(谷中将の部隊は)南京城内に500メートル入ったところで移動を命じられ、虐殺は物理的に不可能であった」と記していた。
それに対し、毎日新聞は、剣持久木(けんもち・ひさき)静岡県立大学教授と渡邊啓貴(わたなべ・ひろたか)東京外国語大学教授の批判的なコメントを紹介した。
剣持氏は、「意見書は、南京大虐殺を否定する学派にくみしている印象を与える。ナチスによるユダヤ人虐殺を否定するのと同様の印象を世界に与えかねない」と指摘。渡邉氏も、「日本に対する印象を悪化させて逆効果になった可能性がある」と述べたという。
マッチポンプの報道か
髙橋氏は、極めて学術的な反論をしているにもかかわらず、紹介されているコメントは、「無条件に大虐殺はあった」「中国の申請は正しい」との認識を前提にしている。しかし、剣持氏、渡邉氏はともに、「南京大虐殺」の研究者ではなく、国際関係論の見地からのコメントに過ぎない。本来、毎日新聞が南京事件を報じるのであれば、その専門である歴史学者に取材をするのが筋ではないか。
また、渡邉氏は「逆効果になった可能性がある」と語っているが、同紙は、その裏付けとなるユネスコ側のコメントを紹介しないばかりか、「恐れ」という主観的な表現を使って印象操作している。マスコミの常套手段であるマッチポンプの報道と見られても仕方がない。
毎日新聞の見解は曖昧
毎日新聞は、これまで「南京大虐殺があった」との論陣を張っているが、肝心の虐殺数に関する見解は、「数は特定していない」というもの。「虐殺はあったが、何人かは分からない」という巧妙な立場をとっている。古代神話ならいざ知らず、同紙は当時多数の記者を南京に派遣しており、虐殺の有無については白黒ハッキリつけられる当事者であるはずだ。
「南京大虐殺がなかった」という事実は、戦後の研究により明らかになっている。大虐殺を認定した南京軍事法廷も東京裁判も、その根拠はすでに崩れている。左翼的なマスコミはそろそろ、歴史の真実に向き合うべきだ。(山本慧)
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