(写真は Wikipedia より)
ユネスコ内での発言力を高めようと、日本政府は、記憶遺産の審査に影響力を持つユネスコのアジア太平洋地域委員会に日本人の委員を派遣する方針を固めた。10月31日付読売新聞が報じた。
先日発表された記憶遺産に、中国の「南京大虐殺」資料の登録を許した反省を踏まえたものと言える。ただ、記事によると、日本が派遣を申し出ても、ユネスコ側に受け入れられる保証はないという。
日本政府はほとんど反論していない
「南京」資料の登録が発表された10月10日以降、日本政府は、ユネスコや中国に対する不快感を露わにした。だが実は、中国の申請が明るみになった昨年6月以降、日本政府は効果的な反論をほとんど行っていない。
記憶遺産の問題について、弊誌では8カ月近く追跡取材を行ってきた。その過程で、中国の申請内容を明らかにして問題点を記事にまとめ、外務省関係者に示し、早急に反論するよう促すなどしてきた。
ところが、外務省は積極的な動きを見せず、アブダビでの最終審議が迫っていた9月中旬の時点で、ユネスコ関係者が「最終審議で日本の立場を説明する機会を設ける予定だが、その場に誰が来るのか、来ないのか、日本政府からいまだに連絡がなくて困っている」と漏らすほどだった。
当事者であるはずの岸田文雄外相は、記憶遺産の問題で目立った発言はなく、まったく存在感が感じられない状況だ。
外務省は「積極的に動かない」と判断したはず
弊誌以外にも、藤岡信勝・拓殖大学客員教授などの保守系の識者が、外務省を訪れ、どのような内容で反論しているのか問いただしたところ、「公表できない」と開示を拒否されている。そもそも政府見解で、事実上、南京で非戦闘員の虐殺を認めている外務省が、一体どんな反論をしたというのか。
率直に言えば、記憶遺産の問題について、外務省はまったく仕事をしていない。もっと踏み込んで言えば、おそらく外務省は「この問題では、積極的に動かない」という判断をしたはずだ。
岸田外相並びに外務省の罪は重い。中国の歴史のねつ造を積極的にとめなかった「不作為」の罪がある。外交的に敗北を喫し、国益を大きく損ねた点において、岸田外相は責任を取るべきだ。(中)
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