2015年12月号記事

現地ルポ × 8カ月追跡取材

「南京」記憶遺産 決定の舞台裏

ユネスコの誤審

中国が申請していた「南京大虐殺」の資料が、ユネスコ記憶遺産に登録された。「従軍慰安婦」の資料は却下されたが、実はユネスコ側は、韓国などと連携して2年後の登録を目指すよう、中国に促していた。最終審議が行われたアブダビで、ユネスコの過ちを目の当たりにした。

(編集部 中原一隆)

最終審議が行われたセントレジス・アブダビの会議室。そこには、申請者である中国・中央档案館の館長のネームプレートがあった。

「関係国からクレームがついた申請は他にもあった。だが、その全てに対応していたら埒が明かない。だから 南京大虐殺も、『政治性』を無視して審議した」

「韓国やフィリピンなど複数の国が関心を持っている 従軍慰安婦問題は、改めて2年後に共同で申請するよう、中国に伝えた

記憶遺産の「南京」登録、「慰安婦」却下の内幕を、淡々と語るユネスコ関係者の言葉に、記者は愕然とした──。

次ページからのポイント

中国の「歴史戦」に立ち向かった人々 藤岡信勝氏/水間政憲氏/阿羅健一氏/天児都氏/釈量子氏

政治利用されてきたユネスコの歴史 / ユネスコでも台頭する中国

「慰安婦」は2017年の登録が確実 / 中国の申請は「歴史のねつ造」資料