2015年7月号記事

日米vs.中国「新冷戦」の始まり

2023年習近平が世界を支配する

日本がとるべき3つの国家戦略

日米と中国の「新冷戦」の時代が、静かに幕を開けた。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)には、日米を除く57カ国が創設メンバー入り。アメリカが不参加を呼びかけていたにもかかわらず、イギリスなどのヨーロッパの国々も参加し、アメリカの影響力低下を印象づけた。習近平国家主席率いる中国は、習氏の任期である2023年までに、アメリカに代わる覇権国家となるのか──。

(編集部 大塚紘子、森國英和、中原一隆、居島有希、河本晴恵)


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part3

習近平は大中華帝国をつくる?

──未来予測シミュレーション

習近平・中国国家主席の任期は2023年までだ。中国の軍事覇権と経済覇権が進んだ場合、世界はどのようになるのだろうか。

今後、日米が何も手を打たない場合の未来を予測してみよう。

◆ ◆

202X年、シルクロード構想やAIIBが成功して中国主導の経済システムが広がり、アジアや中東では、全ての貿易が人民元でできるようになった。

中国の国家主席は国営放送で、「人民元の影響力が増し、ますます地域の平和と発展に貢献できる」と満面の笑みで語った。

(1) 南シナ海で紛争が起きる

1年後、中国は突然、南シナ海の島々は全て中国の領土であると宣言。同時に、フィリピンが実効支配していた島々を中国軍が占拠し、フィリピンとの軍事衝突に発展した。

さかのぼること数年前、中国が南シナ海全域に防空識別圏(ADIZ)を設定。アメリカや周辺国は非難したものの、中国経済の恩恵を得たいため、うやむやにしていた背景があった。

(2) 経済制裁を課すが効果なし

圧倒的な戦力差で劣勢に立たされたフィリピンは、アメリカや日本に助けを求めた。

しかし、中国との戦争を恐れたアメリカは軍事介入せず、ヨーロッパや日本と共に中国に経済制裁を加えた。

一方、中国の経済力に依存するロシア、中東、中央アジアの国々は経済制裁に参加しなかった。人民元決済が可能なため、石油や天然ガス、鉄や銅など、あらゆる戦略物資はシルクロードを通じて中国に入り続けた。

中国は、支配下に置く南シナ海のシーレーン封鎖をちらつかせ、経済制裁を解くことを要求。 日本では石油の輸入ルートが閉ざされる懸念から石油価格が高騰し、物流、製造、電力など、あらゆる産業が危機的状況に陥った。

次ページからのポイント

予測シナリオを現実化させないために

習近平の前世は?

日本はどうあるべきか