2025年8月号記事
ニッポンの新常識
軍事学入門 61
台湾のリコール問題──
頼総統の決死の一撃
世界の流れを正しく理解するための、「教養としての軍事学」をお届けする。

日本安全保障戦略研究所研究員
邱 伯浩
(チョウ・ボハオ)1967年生まれ。台湾出身。陸軍軍官学校、国防大学陸軍参謀学院、国防大学政治研究所などを卒業。政治学博士。現在は日本安全保障戦略研究所研究員を務める。
台湾では現在、立法委員(国会議員)の大規模な罷免(リコール)運動が起きています。背景には、頼清徳氏率いる与党・民進党が昨年の総統選挙には勝利したものの、立法院(国会)の過半数を握れなかったことがあります。
立法院の定数113議席(過半数は57)のうち、民進党は51に対し、野党の国民党が52、民衆党が8、野党寄りの無所属が2議席です。国民党と民衆党は「総統降ろし」で連携し、民進党は少数与党になっています。そのため民進党は国防予算を削られ、議会の権限を強化する法案(後に憲法法廷が違憲判決)も通されるなど、十分な政権運営ができない状況にあります。